LOST
とある、葬儀場。
お通夜の準備が行われている。
葬儀屋の高木裕美子、死に化粧屋の元村紗耶香が準備を進めている。
花屋の坂上昭子が最後の花を持ってくる。

坂上  「よっこいしょっと。今日はまた、花少ないね…。高木ちゃん、今日の仏さん、どんな人?まだ若いのかい?」
高木  「ええ、私と同じ位って聞いてます。」
坂上  「そうかい、そりゃ、可哀相だね。事故かなんか?」
高木  「いや、なんか違うらしいんですよね。」
元村  「事故だったら、こんな綺麗な顔してないっすよ。」
坂上  「そうなの?」
元村  「ええ、生きてるみたいに綺麗ですよ。」
坂上  「へ~。どれどれ?」
元村  「ね。私もこんなの初めて。」
坂上  「本当だね。綺麗な顔してるわ。」
高木  「二人とも。ちゃんと準備して下さいよ。」
坂上  「相変わらず、頭固いね、高木ちゃんは。そんなんだから、いつまでたっても男が出来ないんだよ。」
高木  「大きなお世話ですよ。坂上さんだって、独身じゃないですか。」
坂上  「あたしの事はほっときなよ。」
元村  「はいはい、寂しい女の争いはそれぐらいに。くだらない事言ってないで、さっさと終わらす。」
坂上  「わたしゃ終わったよ。今日の仏さん花少ないからさ。若いのに可哀相だね。」


高木  「やっぱり、急な事でいろんな方に連絡されてないんでしょうか。」
坂上  「そんな事はないだろ。連絡ぐらい今の世の中すぐ出来るでしょうに。」
元村  「やっぱり、連絡できない事情があるとか…。」
坂上  「どういうこと?」
元村  「いや、なんとなく、事故でもなさそうだし、そうかな~って。」
坂上  「やっぱりかい?まあ、こういう事はよくあるよ。あんまり人に言えない死に方したんじゃね…。」
高木  「やっぱりそうなんでしょうか。なんとなく上司が、そんな事を話してたんですよね。」
坂上  「ああ、そりゃ、決定的だね。だから祭壇も質素で花少ないのか。」
元村  「なるほどね。傷なさそうだし、薬かなんかかな…。」
坂上  「最近増えたね、その手の仏さんも。」
高木  「悩みが多いんじゃないですか、最近の世の中は。私だって、上司の事で悩んでますから。」
坂上  「まあ、西さんは慣れないとね~。」
高木  「本当ですよ、よりにもよって西主任って…。」

高木の上司、西純一、入ってくる。

西   「私が、どうか、しましたか?」
高木  「お疲れ様です。」
西   「また文句?」
高木  「いえ、何にも。」
西   「まあ、いいわ。準備の方はどうなの?」
高木  「はい、ほとんど終わってます。」
坂上  「こっちは、終わったよ。」
西   「ご苦労様です。」
坂上  「西ちゃん、もっと仕事回してよ。お父さんも愚痴ってたわよ。」
西   「そうは言ってもね~。お父様は相変わらず?」
坂上  「ああ、糖尿病がひどくてね。ありゃ、そろそろ逝くね。そのときは盛大な葬式を頼むよ。」
西   「何をおっしゃいますか。まだまだ、元気で居て貰わないと。くれぐれも、よろしくお伝え下さい。」
坂上  「分かったよ。まあ、西ちゃん所とは古い付き合いだからね。これからもよろしく頼むよ。」
西   「こちらこそよろしくお願いいたします。」
元村  「こっちも終わりましたよ。」
西   「ご苦労様です。今日は○○(師匠の名前)さんは?」
元村  「他の葬儀場です。」
西   「相変わらず忙しいそうね。なかなか死に化粧なんて頼まれる事少ないのに、良い事だわ。あ、葬儀関係者が仕事多いの喜んだら怒られちゃうわね。まあ、元村さんもやっと一人で出来るようになったから○○も安心ね。それに比べて…。」
高木  「すいません。」
西   「謝るだけなら、誰でもできるわよ。」
高木  「はい…すいません。」
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