種子とメロウと、それから怪奇
『種子とメロウと、それから怪奇』

登場人物
 川端聡志(カワバタサトシ)
    男 29歳 いたって普通の会社員。ライターよりジッポー派。
 ヤマダ 
    男女不問 年齢不詳 何だか胡散臭い。普通の人間に見えるが、違うかもしれない。
 芳村充(ヨシムラミツル)
    男 27歳 年下だが川端の同期。高校時代からの恋人と3年前に結婚。
 宮原かえで(ミヤハラカエデ)
    女 26歳 交際5年目になる川端の恋人。





『季節とバッドエンドと』
   [照]明転 赤。目の前で建物が燃えているような感じ。
   舞台上には川端が一人立っている。

川端   「ゴウゴウ、メラメラ、ボンッ。ゴウゴウ、メラメラ、ボンッ。ゴウゴウ、メラメラ、ボンッ。燃えてる。綺麗だ。朝が来たみたいに明るい。朝焼けみたいに赤い。ゴウゴウ、メラメラ、ボンッ。これで、これで……」

   [音]建物が崩れる音

川端   「笑え、笑えよ、愚かだろ、バカだと思うだろ。本当にバカだよ俺ってやつは。」

   [照]暗転
   [音]消防車の音、救急車の音、野次馬の声

『花とサインと』
   [照]明転
   川端の部屋。川端がニュースを見ている。部屋の隅の方ではヤマダがくつろいでいる。

テレビ(音)「……大人二人と子供一人の遺体が見つかりました。現在この家に住む島田誠さんと妻の真菜子さん、娘の桜ちゃんと連絡がついていません。現場からはジッポーが見つかっており、警察は放火とみて、遺体の身元確認を急ぐとともに、詳しい出火原因について捜査を進めています。次のニュースです。女優、モデルとして活躍中の……」

   川端、テレビを消す。

川端   「くだらない。」
ヤマダ  「物騒な世の中ですね。」
川端   「世界には人の命を何とも思ってない奴もいるんだよ。」
ヤマダ  「ずいぶん他人事のような言い方ですね。」
川端   「あ?他人事だろ。」
ヤマダ  「そうですか。あなたもどちらかと言えばそちら側の人間かと思ってましたけど。」
川端   「失礼な。」
ヤマダ  「違いましたか。いやあ、すいません。」
川端   「で、お前は誰なんだ。」
ヤマダ  「あ、やっぱそれ気になっちゃう感じですか?」
川端   「そりゃ気になるだろ。いつの間にか家に知らない奴がいるんだから。」

川端、山田の方を振り返る。
   間。

川端   「えええええええ、だ、誰だよお前!」
ヤマダ  「気づくのおっそ。」
川端   「う、うるせえ。出て行けよ。不法侵入だぞ。どこから入ってきた。何を盗った。」
ヤマダ  「普通に玄関から入ってきましたよ。何も盗ってません。」
川端   「誰だよお前。いつからそこにいる。何が目的だ。金か?命か?」
ヤマダ  「ヤマダです。二〇分くらい前からですかね。金か命かで言われると、どちらかと言えば命かなあ。」
川端   「か、金ならやる、現金はそこの引き出しに入ってる。今すぐ銀行に行ってありったけの金全部おろしてくるから……」
ヤマダ  「金は要らないんですってば。」
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