魔法使いのお姉ちゃん
「魔法使いのお姉ちゃん」
    作 菅原悠人


登場人物
 ・藤原 加奈(フジワラ カナ)


加奈 私は藤原加奈、小学4年生。突然ですが皆さんに聞きたいことがあります。余命宣言、この言葉を皆さんは知ってますか?病気が治る見込みが無い時に言われることみたいです。では、これは分かりますか?余命1年、分かりませんよね。これは私が生きていられる時間のようです。

最初はちょっと風邪が続くだけでした。お医者さんに行って、少し休めば治りました。治って学校に行って、友達と遊んで、何も悪いとこなんてありませんでした。でも、段々、頭が痛くなることと熱が出ることが多くなっていきました。心配になったお母さんは大きなお医者さんに連れていってくれました。そこで、私の病気が見つかったようです。お母さんは泣いていました。私に何回も謝っていました。でも、私は何でお母さんが泣いているのか分かりませんでした。まだ、私は自分の病気をよく分かっていなかったんです。

すぐに入院することになりました。お父さんもすぐに来てくれて、私を抱きしめてくれました。お父さんは「お父さんがなんとかするから心配するな」と何回も私に言いました。お父さんに聞いてみました。「ねえ、私って病気なの?」お父さんは何も言ってくれませんでした。お母さんにも聞いてみました。「お母さん、私って治るんだよね?」お母さんも何も言わず、口元を抑えて目を逸らすだけでした。私はお母さんとお父さんに言ってしまいました。たぶん一番傷つくことを「お父さん、お母さん。死にたくないよ」

私の病気は手術が出来ないとこまで進行しているようです。看護師の人が言っているのを聞きました。でも、傷つきませんでした。もう私は自分が死ぬことを分かっていたからです。

髪は無くなり、体は細くなり、体を動かすのも難しくなってきました。できることは、顔を外に向けて空を見たり、誰かと話すことぐらいです。最初の方は親友の真子ちゃんが来てくれていました。私の体を心配してくれてたんです。真子ちゃんの笑った顔、明るい声、学校での話。それを聞いて、私は酷いことを言ってしまいました。「私の前で笑わないで、学校の話もしないでよ。私は治らないの!死んじゃうの!だから、もう帰って。二度と来ないで」それから真子ちゃんは本当に来てくれなくなりました。それはそうです。酷いことを言ったんですから。

一年近く経ったと思います。思いますというのは、もう今日が何日か私には分からないからです。私はもう喋ることも、動くこともできません。お母さんとお父さんとお医者さんの声が微かに聞こえるぐらいです。いよいよ私は死ぬのです。点滴をいっぱいしました。よく分からない機械にも入りました。でも、私の病気はやっぱり治らなかったようです。治療は苦しかったです。でも、今日でそれも終わると思います。

お父さんお母さん、先にいなくなっちゃって、ごめんなさい。

「加奈ちゃん、加奈ちゃん」

…夢?

「夢じゃないよ」

だれ。

「私は加奈ちゃんのお姉ちゃんの加奈子だよ」

お姉ちゃんなんていないよ。

「でも、お姉ちゃんなの」

声だって一緒。

「それは加奈子お姉ちゃんが魔法使いだからだよ」

魔法使い?

「そう、魔法使い」

そう。

「苦しい?」

苦しい。

「生きたい?」

え?

「病気を治して、まだ生きたい?」

もう、死ぬんだよ?

「私は魔法使いだよ?病気なんてちょちょちょーってやれば治せるんだよ?」

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