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どうせ三日後に尽きる命と知りながら、二人の男はそこから抜け出した。なぜか。

どうせ三日後に尽きる命と知りながら、二人の男はそこから抜け出した。なぜか。：上演時間目安30分

ゾンビ（斉木徹）
飼育員（湯沢）

《本編》
ゾンビは舞台下手側に首輪で鎖につながれている。倒れている。
飼育員、上手側でバインダーを眺めている。足元に口枷が落ちている。

ゾンビ　ん……あぁ？
飼育員　起きたか？（バインダーを一度置く）
ゾンビ　お……きた……というか、ここ何処。
飼育員　今日からお前の部屋。
ゾンビ　（立ち上がって彼に近づこうとして鎖に気が付く）これは。
飼育員　首輪。
ゾンビ　そりゃ見りゃわかるよ。そうじゃなくて……っあー、え？なんで、これ。

飼育員、ため息をついて頭をかく。

飼育員　お前さ、どこまで覚えてる？
ゾンビ　どこまで？
飼育員　そう、どこまで。
ゾンビ　……健康診断。
飼育員　おう。
ゾンビ　なんか、一通り終わったあと、呼び出されて、で、点滴……あぁ、あれ？
飼育員　そう。鎮静剤。
ゾンビ　ちょい待て……いやおかしいだろ、
飼育員　何が？鎮静剤打たれて、お前が気を失ってる間にここに連れてこられた。それだけ。
ゾンビ　いやだって、それつまり俺もうアウトってこと？いつ噛まれたよ？
飼育員　知るかよ。でも反応が出たんだから。
ゾンビ　会話も成り立ってるぞ。
飼育員　そう、それが変なんだよ。
ゾンビ　変、って。
飼育員　変。ウイルスが検知されたのに、お前はケロッとしてる。
　　　　時間が立たなきゃ体が腐ることもないから見た目はともかく……。
　　　　脳が通常レベルで機能してる。してるはずねぇのによ。
ゾンビ　は？待てよ。
飼育員　死んでるよお前。
ゾンビ　へぇ、じゃあ俺は今ウイルスによって体が動いてるはずなわけ。
飼育員　そう。
ゾンビ　なのに、か。
飼育員　そう。
ゾンビ　参ったな。
飼育員　だからお前は殺さない。
ゾンビ　ゾンビなのに？
飼育員　ゾンビなのに。お前、今日からモルモットだよ。
ゾンビ　はぁ……こんなん（鎖を掴む）より檻の中に入れた方が安全なんじゃねぇの。
飼育員　他のゾンビと混ぜる訳には行かねぇし、新しく檻を立てる予算もねぇ。
　　　　鎖が引きちぎれるとも思えねぇし、話も通じる。
ゾンビ　それでこれか。
飼育員　そう。接触職員は今日から俺一人。
ゾンビ　飼育員だな。
飼育員　やめろよ。
ゾンビ　……遠くね？
飼育員　あん？
ゾンビ　その、距離感。
飼育員　ああこれ。あんま近づくなって言われてるからな。
ゾンビ　はぁ。なに、噛み付かれるとでも。
飼育員　上はそう思ってる。それにどんなに普通に見えようともお前はウイルスだ。
　　　　人間じゃないし、人間を襲うのが本能のはずだろ。

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