Best Picture
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登場人物
僕:一人暮らしのフリーター。自意識が高く、極端に人の目を気にする。
僕:彼女から写真付きの手紙が届くようになったのは、
3ヶ月ほど前のことだ。
彼女とは、SNSで知り合った。
写真を撮るのが好きなようで、
被写体となったものは全て、活き活きしていた。
カメラについては素人の僕でも、
彼女の写真には惹かれるものがあった。
見ていると、心が揺さぶられるような気がする。
最初はメールの添付画像という形式だったが、
「写真の温かみに触れてほしい」という
彼女の要望から、律儀に便箋に添えられて、
現像された写真が送られてくる。
僕:ここで、少し僕自身の話をしようと思う。
僕は、人付き合いが極端に苦手だった。
自意識が高くて、とにかく人の目を気にしてしまう。
小さい頃から、ずっとそうだった。
何をしようとしても、人からどう思われるか、
そればかりが頭を巡って、結局、何もできない。
友人もなく、唯一の味方であると思っていた
両親の目の色さえ、うかがい続けてしまう。
図体だけはでかくなり、逃げるように家を出た。
両親は、特に気に留めなかった。
最後に話したのはいつだっただろう。
両親の吐く言葉の端には、いつもため息が混じっていた。
僕:当然、僕のような人間が社会に馴染めるわけがない。
定職にも就けず、その日暮らしを続けているうち、
何も考えられなくなった。
このままでは壊れてしまうと思った僕は、
今度はネットの世界に居場所を探した。
ここなら、誰も僕を知らない。
何の気も使わなくていい。
しかし、駄目だった。
もはや僕の醜い自意識は、こびりついて離れない
呪いのようなものに変わっていた。
匿名でさえ、僕は人の目をうかがってしまうのか。
絶望した。どうしようもなく消えてしまいたかった。
最期に「死にます」とだけSNSに書き込み
死ぬ準備をした。
遺書を書いた方がよかっただろうか。
両親に迷惑をかけるだろうか。
僕は、最期まで他人の目を気にしている。
僕:朝、目を覚ました。
いつもと変わらない朝。
死ねなかった。
ベランダに立つと、足が震えだしたのだ。
それに、自殺などして変に目立ちたくなかった。
自分でも何を言っているのか、よくわからない。
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