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PERFECT SELECT

　　PERFECT SELECT

　　　　　　　　　　　　　作　さいとうやすひろ

　　登場人物

　　１　

　　２　（妊婦・先生・母・店員・医者　）

　第一場　　新生児室前

　静かな音楽。サスの中に妊婦姿の２登場。電話をしている。

２「でさ、赤ちゃんの名前なんだけど、とにかく、絶対に１文字の名前にしたいの。・・・なんでって、うちの名字は『源五郎丸』って４文字でしょ。それに例えば『直太郎』とか３文字の名前付けたらどうなるのよ。７文字よ７文字！林修の３倍以上よ！とにかく、名字が長いんだから、名前は短い方がいいの。なによ、何が不満なの？え、一文字の名前のやつは、名前の逆いくやつが多いって・・・なにそれ？逆？・・・学？あなたの友達の？・・・いや確かに、学は勉強できないバカだったけどさ、それはたまたま・・・光、光は確かに暗いけど・・・私の友達の香は臭いって・・・ほっといてよ！そんなこと言ったらあなたのいとこの昇、木から落っこちて怪我した・・・いやそうじゃなくて！そう、考えてる名前があるの。男の子だったら「選（えらぶ）」女の子だったら「選（えらび）」ってどう？そう、セレクトとかチョイスの選ぶ。なんでって・・・それは、だって、選ばれて産まれてきた子だし（と、相手が大声を出したジェスチャー）・・・わかったわよ、もう言わないわよ。あと、ほら・・・今の世の中、幸せになるためには、正しい選択ができなくちゃ。そうよ、『正しい選択』これが幸福への道よ。学校選びも、良い学校が選べますように。就職の時もよい仕事が選べますように。結婚も、いいお嫁さんお婿さんが選べますように。で、選。良い名前だと思わない？・・・現実的すぎる？何言ってるの、いい、夢でご飯は食べられないのよ。夢のある名前付けて、いっつも夢みてるような子どもになったら困るじゃない。就職するとき真面目な顔で、『お父さん、おかあさん、私プリキュアになります』とか言い出だしたらどうすんの？オリジナリティ？クリエイティブ？なにそれ？私達の子供、詩人にでもしたいの？そんな物、これからＡＩが全部やるわよ。とにかく、今の時代は、選ぶ時代なのよ。・・・いえ、もう私は決めました！・・・あ、はいはい、健診の時間だからもう切るわ！じゃあね！」

　第二場　　進路指導室

照明F.I。舞台上に、イスと机。

２「選さん！源五郎丸選さん！」
１「・・・はい・・・」
２「そこ座って。」
１「え？」
２「イスに座って。」
１「はい・・・あの、どっちに？」
２「どっちって・・・どっちでも良いわよ。」
１「えっ、どっちでもって・・・（迷う）」
２「何してるの、さっさとそこ座って。」
１「あ、こっちでいいんですか。（座る）」
２「で、この前書いて貰った、あなたの進路希望アンケートなんだけど。」
１「はい・・・」
２「あなた、いったいどういうつもりなの、これ？」
１「どういうつもりって・・・いや・・・別に・・・」
２「別にじゃないわよ。いい？読むわよ。『進路アンケート、あなたの進路希望を下の職業欄から選び、記号で答えなさい。下の職業欄に希望の職業が無い場合は、その他に○をして、具体的に記入しなさい。』まず、３年生３１８人のうち、その他に○付けたのはあなた一人だけなの。」
１「いけなかったんでしょうか？」
２「いやまあ、それはいいわよ。問題は次よ。記入欄、『プリキュアになって地球の平和の為に戦う』何なのよ、これは？どういうつもりなの？」
１「いや・・・なんか・・・夢があるかなと・・・」
２「あのねえ、普通の番組と違って、あの手の番組は２月で新番組と入れ替わるのよ。あなたが卒業するのは３月でしょう。間に合わないじゃない。求人票確認したの？」
１「あ、そういう理由でダメなんですか？」
２「大体、どうして職業欄から選ばずに、その他に○をしたの？」
１「・・・それは・・・職業欄には、私のやりたい仕事がなかったから・・・」
２「なかったって、この職業欄、１４９７８もあるのよ、どれかあるでしょう、やりたい仕事。あなた、どんな仕事がしたいの？」
１「いやその・・・なんというか・・・」
２「ないの？」
１「その・・・なにか・・・夢！人に夢を与えるような仕事が・・・」
２「夢を与えるような仕事・・・例えば？」
１「例えば・・・詩人、そう、詩人とか！」
２「じゃあ、そう書けばいいじゃない。ほら、職業欄のここにあるでしょ。Ｃの１４５番よ。」
１「えっ、あるんですか？・・・・本当だ・・・Ｃの１４５、詩人。」
２「じゃあ、詩人希望って言うことで、進学先も決定でいいのね。」
１「いやあの、進学先って、詩人になるのに進学先とかあまり関係ないんじゃないんですか？そんなものより、やっぱり才能が・・・」
２「関係ない？それが素人の赤坂見附・・・いや、浅はかさなのよ。」
１「なんですか、それは？」
２「気にしないの。いい、ほらここご覧なさい。」
１「なんですか、これ？」

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