ラジオドラマ『思わせぶりカルタ』第1話
『思わせぶりカルタ』 第1話
【登場人物】
♀ 加茂北 希(かもきた のぞみ) :29歳・独身。エビス出版の編集員。酒豪。
♀ 田村 菜月(たむら なつき) :24歳・独身。エビス出版の事務員。常に鼻にかかった甘えた声で話す。腹黒。
♂ 相澤 啓太 (あいざわ けいた) :26歳・独身。エビス出版の営業員。気が弱くリアクションが薄い。
♂ 加藤 賢治(かとう けんじ) :48歳・既婚。エビス出版の営業部部長。世話好きだがスキャンダル好き。
※部長=ナレーション
♀ 加茂北・母 :59歳。加茂北希の母。
♂ 殿 :アギタ県のトップ。無類の猫好き。
※その他:キャスター・同僚・店員
【思わせぶりワード】
○な『名前で呼んでいいんですよ。』(菜月)
ナレーション「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体、特に実在する秋田県とは一切関係ありません。」
ナレーション「ここは、あなたが住む世界とよく似てはいるが、少しズレた世界。
東北地方の北西部に位置し、日照時間が極端に少ないこの土地は、
人のアゴに似た地形であることから『アギタ』と名付けられた。
かつては鉱山資源に恵まれ、更には林業・稲作・酒造、そして漢方薬の原料の栽培も盛んであった。
しかし、いずれ資源は枯渇し、力を大きく落とすことになった。
景気回復の策として打ち立てられたのはスポーツ団体への支援であった。
2018年には、県立の高校野球部が甲子園で優勝して大きく盛り上がり、政策は成功。
それによって数年後にはほぼ完全な地方自治を確立した。
そして20XX年現在、アギタは、とある大きな問題を抱えていた…。」
12月。
エビス出版社内、既に定時は過ぎているが、残っている社員は多い。
打ち合わせをしている声や、キーボードを打ち込む音が聞こえる。
ナレーション「ここはエビス出版オフィス。
代表である高橋 浩一郎が一代で築き、現在ではパート社員を合わせると約30名が働いている。」
同僚 「加茂北さん、これチェックお願いします。」
加茂北 「は〜い。」
同僚 「私はこれで終わりですけど、加茂北さんは今日も残業ですか?」
加茂北 「うん、これ今日中にあげないと間に合わないから。…あ、ここ間違えてる。」
同僚 「え、ホントですか?」
加茂北 「ほら、ここの漢字。あ、あとこの写真、もうちょっとサイズ大きくして、こっちに貼った方がバランス良くない?」
同僚 「あ、本当だ。すぐ直します。」
加茂北 「データくれればやっとくよ、ついでだし。直して発注しておけばいいんだよね?」
同僚 「え、悪いですよ。」
加茂北 「今日、旦那さんの誕生日なんでしょ?早く帰ってあげなよ。」
同僚 「じゃあ…、すいません、お言葉に甘えます。データコピーするんで、ちょっと待ってください。」
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