流星群
天使バージョン2
『流星群』 天使バージョン2
作:四香
登場人物
洋平♂
夏海♀
洋平M「学生の頃、俺は海のそばに住んでいた。古い線路沿いにある、中庭から砂浜に降りることが出来る、シャレた小さな病院が目印になっていた。そして、この海岸沿いの道は、その頃 飼っていた犬の散歩コースだった。俺は毎朝、愛犬
と一緒にこの砂浜を走っていた。そう、あの晴れ渡った初夏の日も。」
洋平「おい、コロ!待ってってば!!砂浜は足がとられて疲れるんだから〜」
コロ「ワン、ワン!」
洋平「はぁ、ったく、元気一杯だな〜。コロには勝てねぇなー」
コロ「ワン、ワン!」
洋平「コロ、ちょっと休ませろ! ふうっー」
洋平「ああ、雲ひとつない青空だなー」
夏海(少し遠くから)「元気で可愛いわんちゃんね」
洋平「えっ?誰?」
夏海「こっちよ」
洋平M「まるで空から声が聞こえた……そんな気がした。俺が寝転がったまま、声のしたほうへ目を向けると、病院の中庭に、白い服を着た美しい女の人が立っていた。歳は俺より一回り上か。まるで天使……。俺にはそう見えた。」
夏海「こんにちは。コロちゃん、いつもすごく元気ね」
洋平「えっ?コロを知ってるの?」
夏海「ええ。毎日、この時間に散歩して、いつもこの窓の下で、おい!コローって」
洋平「それは、こいつが言うことを聞かないから」
コロ「ワンワン!」
洋平「って、おい!コロ!もう行くのかよ!ったく。じゃーね、おねえさん」
夏海「 ねえ、ちょっと待ってよ」
洋平「えっ」
夏海「私、夏海。夏の海と書いて、な・つ・み。あなたのお名前は?」
洋平「お、俺は…洋平。」
夏海「コロちゃんと洋平君ね。ねぇ、お願いがあるの。毎朝の散歩ついでに、私の話し相手になってくれない?」
洋平「 話し相手?まぁ、暇だから別にいいけど」
夏海「ありがとう。洋・平・君」
洋平「 でも…ま、毎日は、無理だかんな」
夏海「ふふふ、時間のある時だけでいいわよ」
洋平「あ、ああ。」
洋平M「次の日から俺は毎朝、走って砂浜へ向かった。アルバイトだけで退屈だった俺の日常が変わった。まだLINE なんて気の利いたものがなかった時代。朝が来るのが待ち遠しい毎日。まるで夢のようなひと夏だった。」
洋平「でさー、もう時間が無いっていうのに、自転車の鍵が見当たらないんだよー」
夏海「それで?」
洋平「仕方がないからさー、散歩がてら歩いて行こうと思ってコロを見たら、こいつがくわえてるんだよ、鍵を!」
夏海「コロが?あはは!」
洋平「そうなんだよ〜」
夏海「洋平くん、最近、朝早いねー。今までより1時間くらい早いんじゃない?」
洋平「いやー、コロが起こしに来るんだよ。早く散歩連れてけって。俺はホントはもっとゆっくり寝てたいんだけどねー」
「なんだ、そうなの。てっきり私の話し相手に来てくれたんだと思ったのにー」
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