マリッジブルース
マリッジブルース
一場
暗転中
どこからともなく声が聞こえる
男 (MAX大きい声で)結婚してください!!
サスの光の中に理賀が座っている。
理賀 その時の事は今でも鮮明に覚えています。お世辞にも満天の星空とは言えない、薄曇りの合間から見え隠れする月の光がかえっていつもとは違ったシチュエーションを意識させるには十分すぎるほどでした。表情すらもはっきりと窺い知ることの出来ないくらいでしたが、彼の口から発せられたその言葉は、私の心の奥底へストレートに響いてくると共に、少し離れた高層マンションの最上階から誰かが様子を伺うほど、辺りに響き渡ったのです。一斉に明るくなっていく光景を目の当たりにし、あたかもイルミネーションが順番に点灯していくファンタジーの世界にいるような感覚の中、その光から覗く影に期せずして注目を浴びてしまった現実という名の扉を前にした私は、急に恥ずかしさを覚えその場から走り去ってしまったのです。その日以来彼とは・・・
暗転
ナレーションが流れOP
明転
立ってテーブルや椅子の位置を直したりしている理賀だがふいにため息をつく
そこへ三浦と春夏がやってくる
三浦 あっいた!理賀さん理賀さん!大変です!
理賀 そんなに大きな声出さないの。お客様に見られたらどうするの?(春夏に気がつき)あっ本日はおめでとうございます。
春夏 あっはい・・・。
三浦 それどころじゃないですよ!大変なんです!
理賀 何が?
三浦 何がってとにかく大変なんですって!
理賀 だから、何がどうしたの?三浦は話が色んなところに飛び火するから分からないっていつも言ってるでしょう?落ち着いて話しなさい。
三浦、椅子に座る
三浦 ふう。
三浦を見る二人、三浦それに気がつき
三浦 どうぞ。
理賀 どうぞじゃなくて、なんで三浦が先に座るの!春夏さんが先でしょう?
三浦 あっすみません。(立ち上がり隣の席に移動)どうぞ。温めておきました。
春夏 ありがとうございます。
春夏、三浦椅子に座る
理賀 三浦、ふざけてないで何があったのか説明してもらえる?
三浦 すみません。えーとですね・・・理賀さんは座らないんですか?
理賀 (一瞬躊躇して)私はいいわ。
三浦 でも、そんなに上から目線だと話しづらいですよ。
理賀 (ジェスチャー付で)こういうのは別に上から目線て言わないの。話しづらいんだったら立てば良いじゃない。
三浦 今座ったばかりですよ?それに私たち二人が立って春夏さんだけ座ってるのも変じゃないです?ねえ?
春夏 私は別に・・・。
理賀 分かった。座らせていただきます。
理賀、極力おしりが直接椅子に触れないように座る(客席には不自然に見えるが他の二人にはそう見えないように)
理賀 で、何があったの?
三浦 それなんですけど、実は新郎が居なくなっちゃったんですよ。
理賀 いなくなった?いつからいないんです?
春夏 朝は一緒に来たんですけど、いつの間にかいなくなってしまって。
理賀 トイレじゃないですか?
三浦 でも、もう1時間ですよ?
理賀 お腹壊してたり便秘だったりしたらそのくらいは私もたまにありますよ。式当日で緊張もしているでしょうし。
春夏 いつもは5分くらいで終わるんです。いつ緊急オペが入るか分からないからって。
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