ルームシェア
野々村 乃之歌 (ののむら ののか)
蜂須賀 誠二 (はちすか せいじ)
相澤 智美 (あいざわ ともみ)
千葉 孝太郎 (ちば こうたろう)
若本 菜月 (わかもと なつき)
舞台上はとある一軒家のリビングルーム。
舞台中心にはローテーブルがあり、それを囲むように三つのソファー。
上手奥にはキッチンがあり、そこからバスルームへと繋がっている。
また下手奥には二階へ通じる階段、下手手前には玄関に通じる道。
舞台奥、キッチンと階段の間に扉が二つ。
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客入れの間は常に、僅かではあるが都会の喧噪が聞こえ続けている。
人のざわめき、車や電車の通過音、とおりゃんせ…。
開幕の時間になると喧噪にまぎれて音楽が入って来る。
音楽、喧噪共に段々と大きくなり、それに合わせて会場はゆっくり暗転していく。
全ての音が途切れるとともに明転。
リビングルームに集まる五人の男女。
五人、真ん中のローテーブルを囲んで黙り込んでいる。
蜂須賀 悪い、嘘ついた。
菜月 え?
蜂須賀 俺さ、諦めがわりぃんだわ。現実はこんなもんなんですって言われてもさ、はいそーですかって受け入れることが出来ねぇんだわ。どうにか変わんねぇかなって思うわけ。
四人 ……。
蜂須賀 人間ってさ、ちっぽけで、やれることなんてたかが知れてんだよ。それでもほんの少しでもいいから、何か変わんねぇかなって、変えられるんじゃねぇかなって。
携帯を操作する蜂須賀。
野々村 …どういうことですか? 誠二さん。
蜂須賀 …孝太郎、よく見てろ。俺からのプレゼントだ。
野々村 誠二さん!
蜂須賀が携帯のボタンを押すとともに、暗転。
音楽。舞台背景にタイトルが映し出される。
『ルームシェア』
作、演出、キャストとOPが続く。
OPが終わるとゆっくりと舞台下手の野々村に光が集まる。
野々村、辞書を開いており、それを読む。
野々村 ルームシェア。住まいの居住形態のひとつ。親族関係や恋愛関係にない他人同士が、ひとつの住居を共有して居住することを示す。(辞書を閉じ)…私たちは一年前、ネット上で知り合いました。とある掲示板です。その掲示板はもともと、当時話題になっていた政治犯罪について、素人がおのおの勝手な意見を語り合うための、つまりはどこにでも転がってるよくある掲示板でしたが、一通りネタを語り尽くした私たちの話題は、段々と日常の他愛のないものへ移り変わり、いつしかその掲示板には、その日あった、ちょっとした出来事を語り合うような、そんな妙に仲のいいメンバーだけが残っていました。そんな私たちにはいくつかの共通点がありました。ひとつ、東京都内在住。ふたつ、二十代。みっつ、お金がない。よっつ、引っ越したがっている。誰が言い出したのかは思い出せません。じゃあこの五人で、ルームシェアをしないか。そうして集まったのが今から約二ヶ月前のことでした。
暗転。
舞台背景に文字が投影される。
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