ザ・ムービー


  天野 郁  (あまの いく)
  川井 早紀 (かわい さき)
  川井 史哉 (かわい ふみや)
  篠原 雅広 (しのはら まさひろ)

  馬場    (ばば)
  キャプテン・ジョー
  インタビュアー
  友人A


  舞台上には無機質な直方体が無造作に並べられている。
  大きさはそれぞれ異なり、舞台手前には広く空いた空間に小さな直方体が二つ三
  つ、舞台奥になればなるほど密に並び、階段状の高い足場となっている。
  それぞれの箱の間には隙間がありそれぞれがではけ口となっている、一見迷路の
  よう。


■■■

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  暗闇の中、舞台奥の一点から客席頭上へと光が広がる。
  舞台はとある古びた映画館、どうやら映写機から舞台手前に投影されているよう
  だ。
  そこへ当時九歳の天野郁が身を隠しながら静かに入って来る。
  館内を確認すると後ろに合図をする。
  同じく九歳の川井早紀登場、舞台正面を見て驚きと感動の表情。
  天野郁、適当な椅子を選んで川井早紀に手招きする。
  はしゃぐように、しかし静かに天野郁の隣に座り込む。

郁   すっげぇだろ。
早紀  うん、すごい。
郁   でっけぇよな。
早紀  うん、でかい。

  二人、食い入るように映画を見つめている。
  早紀、時折拳を握りしめ身体が前に出る。
  郁、その様子を隣で静かに感じながら、

郁   俺さ、いつか映画監督になるんよ。

  早紀、驚いて郁を見るが、嬉しそうにまた映画に視線を戻す。

早紀  天才じゃん。
郁   当たり前田のクラッカー。
早紀  じゃあ、私はそのヒロイン。
郁   (一瞬驚くが)嘘ついたら針千本。
早紀  ……。
郁   五本。
早紀  約束。
郁   約束。

  二人、小指を合わせる。
  映写機の光、段々と広がり、二人光に包まれる。
  光の中、音楽とともにOP。
  『ザ・ムービー』開幕。
  暗転。
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