Zeit


              Zeit
            ――ツァイト――

     ++++++++++++++++++++++++

           フランツ
           ルイーゼ

           ティエス
           シュテファン

           『エリンネルング』

           レニ

     ++++++++++++++++++++++++



時計塔が時を打つ音。
舞台では『エリンネルング』が、誰かを待っている。

声  お疲れさまー
声  お疲れ様です。また明日
フランツ  お疲れ様

事務所から出てくるフランツ。彼を見送る『エリンネルング』。

シュテファン  ヘル・リーフェンシュタール!
フランツ  やあ…君かシュテファン。
シュテファン  今、お帰りですか?
フランツ  ああ
シュテファン  寒いですねー。あっという間に真冬の天気ですね
フランツ  そうだな。もう暫くすれば雪が降るかも知れん。
シュテファン  はやいもんだなぁ、僕がこの町に引っ越してきたのは夏だったのに
フランツ  そういえば、君もいつの間にかうちの事務所にすっかり馴染んだな
シュテファン  お蔭様で。僕、この町気に入ってるんですよ。市役所の庁舎の上に時計塔があるでしょう? 
        最初に来たときにあれを見て。ああ、ここは好きになれそうだなぁって思ったんです。だから…
フランツ  だから?
シュテファン  いえ、何でもありません
フランツ  そうか……
シュテファン  ヘル・リーフェンシュタール?
フランツ  あ、済まない。そうだな、あの時計塔は私の家からも見える。
      あれを見ながら暮らして、もう何十年だな。
      私は子供の頃からこの町にいたから
シュテファン  へえー、そんなにですか? いいですねぇ
フランツ  羨ましいかな?
シュテファン  羨ましいですよ。僕なんか生まれ故郷は工場地帯ですもん
フランツ  そうか。だが、そりゃあ確かに楽しい事もあったけど、この街には良い思い出
      ばかりというわけでもない。贅沢を言うつもりはないよ。その全てが詰まって
      いるのが、私にとってのこの街、かな
シュテファン  カッコいいですねぇ
フランツ  笑うなよ
シュテファン  本当ですよー。あ、僕こっちですんで――じゃ、お疲れ様です。
      さようなら! また明日
フランツ  ああ、またな

家に向かって歩き出すフランツ。
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