アンラッキー・トレイン
アンラッキー・トレイン
音田薫
(人物一覧表)
安藤(28)…会社員。
岡田(28)…安藤の同僚。
児玉(22)…就活している女性。
アナウンス…電車のアナウンス音。
〇地下鉄の中
電車の音。ガタン、ゴトン。
安藤・岡田、二人並んで座っている。
安藤、腕時計を見る。
安藤「間に合うかな」
岡田「大丈夫だろ。いつも通りなら黒猫駅まで二十分ってとこだし」
安藤「ギリギリじゃない?」
岡田「日本の地下鉄を信頼しろよ」
安藤「でも、不安だよ。特に今日はさ」
岡田「今日?」
安藤「珍しいね。忘れた?」
岡田「すっかり」
安藤「今日は電車事故の日だよ」
岡田「そっか、そうだった。朝刊に書いてあったっけ」
安藤「しっかりしてよ」
岡田「仕方ないだろ。こう忙しいと今日が何の日か気にする暇もないのさ」
安藤「我が株式会社ラッキーボーイのブラック企業っぷりにはまいっちゃうよね」
岡田「仕方ないだろ。この不景気、社員を休ませる余裕はないんだろうさ」
アナウンス「紫鏡、紫鏡」
電車、止まる音。
安藤、ニヤニヤしながら。
安藤「ねぇねぇ、岡田。何でこの町がこうなっちゃったか、知ってる?」
岡田「そりゃ、国がそう決めたからだろ。日本から不幸な災害や人災を無くすために」
安藤「どんな方法でそれを実現しているかって、知ってる?」
岡田「……」
安藤「僕は、知ってるんだな」
岡田「へー」
安藤「……おい」
岡田「ん?」
安藤「……来てよ」
岡田「何が?」
安藤「気になるでしょ、そこはさ」
岡田「特に」
安藤「じゃぁ、気になっといてよ」
岡田「何だよそれ」
安藤「いいからさ」
岡田「……あー。気になるな―。教えてほしーなー」
安藤「お答えしましょう」
岡田「どこ目線だよ」
安藤「日本には八百万の神様がいるっていうのは、知ってるよね? その中の、不幸を司る神様」
岡田「貧乏神とか、その辺?」
安藤「そう。その辺の神様とよく分からない方法で交信して、謎の力で日本中の不幸を集め、まぁそんな感じでこの町は日本一アンラッキーな町になったわけ。そして今日は、この不思議パワーによって日本中の電車事故が集まって来るのだ」
安藤、岡田に対しどうだぁ、という顔。
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