夢のような生活
夢のような生活
音田薫
(人物一覧表)
A(20)…大学生。
B(20)…Aの友人。
C(22)…金持ちの御曹司。
D(56)…執事。
(本編)
〇大学の講義室
A、居眠り。B、起こす。
B「おい、おいA」
A「ん」
A、あくび。
A「講義終わった?」
B「あぁ。教授ももう帰ったよ」
A「そっか。あー、よく寝た」
B「ほんとにな。一限だからってさすがに毎回寝るのはどうかと思うぞ」
A「仕方ないだろ。俺、朝弱いんだ」
B「前にも言ったけど、早寝早起きとか、改善する余地はあるだろ」
A「俺そういうのじゃないから」
B「なんだよ。そういうのって」
A「ほら。な?」
B「……まぁ、言わんとすることは分かるけども。いい加減に真面目にやらないとまずいんじゃないか」
A「でも、この講義ザルなんだぜ。最後にレポート書いて提出したら終了」
B「A4で数枚だっけ。確かに楽だけどさ」
A「ま、いざとなったら頼りにしてるぜB先生!」
B「俺が教えるのは大学生じゃない。そもそもまだ先生でもないぞ」
A「頼むよ相棒」
B「ま、いいけど」
A「さすが。お礼ははずむよ」
B「そりゃどうも。……次の講義まで暇だな」
A「同じ教室ってさ。移動しなくていいのは助かるけど、待つ間暇だよね」
B「十五分の休みって、また中途半端だしな……。あ、そうだ。お前、さっきどんな夢見てたんだ?」
A「え? もしかして俺、寝言言ってた?」
B「そういうわけじゃないが。なんとなく気になってな。ほら、この前心理学の集中講義とったろ」
A「夢と心の繋がり、だっけ。さすがは好奇心の塊君だね」
B「変なあだ名付けるなよ。で、どうなんだ」
A「それがさ。夢の中で、俺は金持ちの御曹司ってやつになっててさ」
B「はいはい」
A「ピアノやらヴァイオリンやら、高そうな楽器の稽古とか、英語にフランス語に中国語、マルチリンガルになるための語学の勉強等々……。なんだか難しそうな習い事の毎日」
B「すごいテンプレートな金持ちだな。なんか、皆が憧れる金持ちのそれって感じの」
A「忙しいが充実した毎日。休日はフェラーリを海岸に走らせ、ロマンティックな夕日に思いをはせ、そこで出会った美しい女性と一夜の……」
B「おぉぅ。それはもう、けっこうな」
A「で、明日はどんな一日になるかと思いながら天蓋付きのベッドで眠りにつき、目が覚めると」
B「目の前には俺が」
A「居眠りの間に見るにしては、いやにリアル庵夢だったよ」
B「もしかして、前世の記憶とか」
A「そんなSFみたいなこと」
B「それとも、その御曹司とやらに意識を乗っ取られる寸前なのでは」
A「B、そういうの好きだよね」
B「でも、教授も言ってたろ」
A「昔はそう信じられてたって話でしょ。いや後者はなんか違うけども」
B「ま、冗談はこれぐらいで……。実際、そんなこてこての金持ちってやつはいるのかね」
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