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少女、誘拐事件

「少女、誘拐事件」
　　　　作　菅原悠人

登場人物
　・女…中学三年生
　・男…４２歳

　　　舞台中央に椅子が一つ置いてある。
　　　学生服を着ている女の子が椅子に座らされて、縛られている。
　　　女と離れた場所に手提げカバンが置いてある。

　　　男はウロウロして落ち着きがない。
　　　服装は、黒っぽく地味。

女　あーあ、人生あっけなかったな。

　　　男はイライラした様子で歩き回っている。

女　こんなに早く死ぬんならショートケーキとモンブランもっと食べれば良かった。
　　幸せって何だろうね。
　　死にた〜い、って冗談では言っても死ぬ人なんて一人もいないし。
　　逆に死ぬとか考えてない人が突然死ぬことだってあるし。

　　　男は頭を掻いている。

女　そう思うと私の１５年はどうだったのかな？死ぬとか考えたことないし、
　　幸せだったかも。ねえ、どう思う？
男　……
女　まあ、結局死ぬのは変わりないし、幸せじゃなかったんだろうな。
幸せな人はこんな形で死なないもんね。あーあ、幸せになりたかったな。
男　……

　　　女は男に向かって叫ぶ。

女　あーあ！幸せになりたかったな！！
男　黙れ！
女　黙ったら良いことでもあんの？
男　お前、自分の状況分かってんのか。
女　縛られてます。
男　だったら黙れよ。
女　何で縛られてたら黙らなくちゃいけないの？
男　……
女　ねえ何で、何で何で何で〜！
男　黙れ！！

　　　男は女の手提げカバンを漁る。

女　だから何にも入ってないって。
男　…これなんだ？

　　　男はカバンの中から錠剤が入ってる瓶を取り出す。

女　ビタミン剤、肌に良いんだよ？
男　くだらない。
女　イライラしても良いことないよ？あ、ないからこんなことしてんのか。
男　携帯は。
女　だから持ってないって、しつこいよ。
男　今時携帯持ってないガキなんかいるか。
女　あのさ、それ偏見。持ってない人だっているし。

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