ショート遠距離恋愛
ショート遠距離恋愛
音田薫
第3稿
(人物一覧表)
男(18)…男子高校生
女(18)…女子高校生
〇高校の教室
女、一人。立ち尽くしている。
女「あの事故からもう、2ヶ月も経つんだね」
女、うつむく。
女「どうして、こんなことに……。私を置いて、行っちゃうなんて」
男、頭に例の白い三角形を着けてやってくる。
男「……よ、よぉ」
女「えぇ……? え? あ、あなた、なんで、死んじゃったんじゃ」
男「うん。死んだよ」
女「え……? 幻?」
男「違う違う。本物さ。幽霊ってやつだよ」
女「幽霊?」
男「そーそー。いやー、未練があるからまだ死にたくないって閻魔様に駄々をこねたら、幽霊ぐらいなら認めてやるって。ま、交渉に二ヶ月もかかっちゃったけどな」
女「本物、なの……?」
男「まぁ、悲しいことに証明はできないんだけどな」
女「いいよ、証明なんて……。私にはわかる。あなたは、幽霊になっちゃってもあなただよ」
男と女、二人で笑い合う。
女、感極まり男へ飛び込もうとするが、男が制止する。
男「待った! 幽霊だから、触れない」
女「あ、そっか……」
男「俺をすり抜けて壁にぶつかっちゃうよ」
女「こんなにすぐ近くにいるのに、触れられないなんて……」
男「ごめんな」
女「ううん。謝らないで。たとえ幽霊でも、そばにいてくれるだけでも、幸せだから」
男「ありがと」
女「それに、幽霊になったってことは、大学も」
男「そうだな。俺死んでるし、岐阜の大学に行くことも無くなったな。まぁ、残念ではあるけど、君と一緒にいられる、大義名分ができたってわけだ」
女「そうね」
男「遠距離恋愛はきついからなぁ。いろんな意味で。うん」
女「あ、そうそう。大学と言えばね」
男「ん?」
女「私、長野の大学に行くことになったんだ。お母さんがね、ここにいたんじゃ、いつまで経っても立ち直れないだろうからって」
男「そう、なのか」
女「でも、大丈夫だよね。貴方、幽霊だもん。一緒に、行けるよね」
男「……ごめん」
女「え?」
男「俺、一緒に行けない」
女「何言ってるの? だって、もう岐阜に行くこともないんでしょう」
男「そうだけど。実は俺……地縛霊なんだ。ここの土地にとりついた、地縛霊だ」
女「え? そ、それじゃあ」
男「ここから、離れられないんだ」
女「そ、そんなことって」
男「閻魔様に頼み込んだんだけど、この愛知県にとりつく地縛霊が限界だったんだ」
女「県って、大きくない?」
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