メタファー
 幕が開く
かな、倒れている。彩愛、隣で腰掛け本を読んでいる。暖炉。暖かい雰囲気。
かな、目を覚ます。
彩愛「気がついたかい?」
かな、一気に後ずさる
彩愛「安心して。何もしない。」
かな、おびえている。
彩愛「ほら、武器は持っていない。」
かな、ナイフを手に取り構える。
彩愛「そう警戒するな。水、飲むだろう?」
かな「・・・。そこに置け。そっとだ。」
かな、水を手に取り、一気に飲む。咳き込む。
彩愛「ゆっくり飲んだ方がいい。」
彩愛、かなの近くの道具を取ろうとする。
かな「近づくな。」
彩愛「君を殺すつもりなら、そうしてる。」
かな、水を飲み干す。
彩愛「安心しなさい。ここに男はいない。」
かな「お前、女か。」
彩愛「そうだけど。」
かな「本当だろうな。」
彩愛「あぁ。ここに男はいない。」
かな「お前、何者だ?」
彩愛「気になるのかい?」
かな「こんなもの、どうやって手に入れた?」
彩愛「ここは君の住んでいた場所とはずいぶんと違うだろう。山からの水がある。ここには森がある。食料には困らない。」
かな「森?森って何だ?」
彩愛「そこから見えるのが森だ。」
かな、上手奥で窓をのぞき、外を見る。
かな「ここはどこだ。」
彩愛「森の中。」
かな「お前、本当に何もしないのか?」
彩愛「そのナイフ。それは動物を捌くために使う。」
かな「お前がここの長ってわけか。」
彩愛「それはどうだろう。ここには私しかいない。深い森だから。」
かな「本当に一人か。」
彩愛「疑り深いね。そっちが出口だ。一度外を見て回るかい?」
かな「・・・。」
彩愛「私がいては通りづらいか。」
 彩愛、後ろへ下がる。
かな「・・・。動くなよ。妙な真似をしたら、殺す。」
 かな、扉をあける。
 オオカミの声。かな、慌てて扉を閉める。
 彩愛、笑う。
かな「何がおかしい。」
彩愛「オオカミというんだ。」
かな「それは知ってる。豚を食っちまう。」
彩愛「へぇ、君の街には豚がいたのか。」
かな「アマテラスのもんだけどな。」
彩愛「アマテラス?」
かな「私の街の長だ。」
彩愛「君は食べたことがあるのか?」
かな「豚をか?食べられるわけないだろう。」
彩愛、少し笑う。
かな「何がおかしい。」
彩愛「いや、すまない。富を独占する者の名がアマテラスとは皮肉なものだ。」
かな「それはアマテラスへの悪口か?」
彩愛「そうなるだろうね。」
かな「やめろ。もし誰かに聞かれたら、お前、殺されるぞ。」
彩愛「心配ないよ。ここは君のいた街からずいぶんと離れている。」
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