愛されたいバレンタイン
「愛されたいバレンタイン」
作 菅原悠人
登場人物
・男…清水
・女…佐藤
男 僕には好きな人がいる。僕の前の席に座っている佐藤さん。好きになった理由は本当に単純。単純すぎて顔を覆ってしまいたい。なんでって?恥ずかしいからだよ!当たり前でしょ!
一目見て佐藤さんのことを好きになってしまった。いわゆる一目惚れってやつだ。はあ〜、こんな僕が一目惚れって、恥ずかしいったらないよ。
小学校を卒業して中学生に。小学校の時に仲の良かった友達とは違う中学に通うことになってしまって。しかもその友達はクラスの人気者で、近くにいれば困ることなんてなかった。だから正直離れると知って凄く不安だった。僕は人と話すのが苦手だし、友達もどうやって作るか全然分からないし…。歌で友達100人出来るかな?なんのがあるけど、なんて暢気な歌なんだと思う。歌を作ったやつ出てこい!ボコボコにしてやんよ!
でも登校する時にそんな不安は吹き飛んだ。理由は…「自転車で登校できるぜ!やほーい!」バカですよね。自分でも思います。バカに自転車を与えてはだめです。
気がつけば行こうと思ってた時間より1時間も早く学校に着いてしまった。別にやることもないし、しょうがないから新しい教室に入ったんだけど、僕は一番じゃなかった。僕より早く一人の女の子が教室に入っていた。その子は机につっぷして寝ていて僕には気づいていなかった。僕の席はその子の後ろだったから、起こさないように席に座ったんだけど
女 ん…、あ
男 その子は起きてしまった。そして、その子が僕のことに気づいた時
女 おはよ
男 って明るい声で言ってくれた。その瞬間、僕はその子のことを好きになった。名前は佐藤さん。その後も佐藤さんは僕に色々聞いてきた
女 ねえ名前は?どこの小学校に通ってたの?どこの部活入るか決めてる?テレビって何見る?ドラマ派?お笑い派?私はドラマ派〜。友達100人出来るかな〜、知ってる?あの歌って私が作ったんだよ?
男 ボコボコになんてできません。僕は全然喋れなかったと思う。てか、緊張しすぎてなに喋ったか覚えてないし!なに聞かれたのかも正直!あんまり!全然!覚えてないよ。絶対変な奴って思われたよ。はあ〜。
佐藤さんはクラスの人気者になっていた。いつも元気だし、明るいし、笑顔でいっぱいだし。クラスの全員が佐藤さんと友達になりたいようなそんな感じだ。それにひきかえ僕は、いつも一人で自分の席に座って本を読んで、一人で寂しいやつって思われないために勉強もしてたりした。誰も僕の席には近づかない。僕と友達になりたい人なんてクラスにきっといない。つりあわない。彼女は僕の前の席に座っているのに、手を伸ばせば届くのに、届かない。とても遠い。
自分から話しかければいいのに、話しかければ友達になれるかもしれないのに、僕なんかが佐藤さんに話しかけてもいいのかなとか、話しかけたら佐藤さんに迷惑をかけるんじゃないかなとか、そんなことがぐるぐるぐるぐる頭の中を走って。
僕には勇気がないんだ。佐藤さんのことは好きだけど。自分が傷つくのは嫌だっていうバカな理由。僕はバカだ。ただ佐藤さんと友達になりたいだけなのに。話したいだけなのに。
時々、佐藤さんが僕のことを見ている気がする。いつも一人の僕を可哀想って思ってるのかな。それとも、バカにしてるのかな。だとしたら、嫌だな
佐藤さんと話が出来ないまま、季節は冬。2月14日になった。もちろん僕だって男だ!ロッカーの中だって机の中だっていつもより時間をかけて確認したさ!まあ、もちろん入ってないけどね!分かってたよ!!
佐藤さんはチョコレートを友達に配っていた。僕はそのチョコレートを見ることしか出来なかった。友達になっていれば、僕も佐藤さんからチョコレートを貰えたのかな。でも、ダメか。佐藤さんと話も出来ないし
女 ねえ
男 え
女 バレンタインだから
女 私には好きな人がいる。好きになった理由は…。話す前に私の小学校のことを話そうかな。私は友達は多かったし、学校は毎日楽しかった、小学5年生までは。その後は本当に最悪だったの!最悪すぎて、ずっと下しか見てなかった。手もずっと握りしめてて痛かった。
5年生の終業式の時、明日から春休みだー!ってウキウキしていたら、クラスの男子に告白をされた。私のことをずっと好きだったんだって。気持ちは嬉しかったけど、付き合うとか分かんないし断った。そこから、クラスから無視されるようになった。私が何を話しても無視するし、何で無視するのか聞いてもダメ。そこで私の5年生は終わった。
春休みが終わって6年生になっても変わらなかった。私が「おはよ」って言ってもなにも返ってこない。まるで私はいないようだ。何でなのか分からない。何で私はこんな目にあっているんだろう。と思って教室に一人でいた時、遠くから私のことを話してる声が聞こえてきた。そこを見ると告白をしてきた男子だった。
そいつは私のことを「ビッチだのアバズレだの、あいつに話しかけると変態がうつるぞ」だの言っていた。私はそれを聞いた後すぐに帰って、泣いた。誰もいなくなって。学校が楽しくなくなって。行きたくなくて。誰も信用できなくて。もう、人が恐くて。それで私の小学校は終わった。
私の通う中学校には、小学校の人達は誰もいなかった。そりゃそうだ、誰もいない中学校をお父さんとお母さんに頼んで選んだんだから。これでまた私は楽しく学校を通うんだ!もう誰も私を無視しない学校に。
不安だった。不安で押しつぶされそうだった。私は学校が始まる一時間以上前に新しい教室に入り自分の席に座った。当然まだ誰もきていない。
新しいクラスの人に「おはよ」って言ったら返ってくるかな。また無視されたらどうしよう。せめて明るく言わないと。そんなことを考えていたら眠ってしまったらしい。
そして後ろから物音がして起きた時、見ると一人の男の子がいた。私は勇気を出して、できるだけ明るく、その子に「おはよ」って言った。そしたら
男 あ、おはよう
女 返ってきた。私の「おはよ」が、ちゃんと返って来た。これだけでこんなに嬉しいって、私はなんて単純なんだろう。それから私はテンションが上がってしまってその子に色々聞いてしまった。「ねえ名前は?どこの小学校に通ってたの?どこの部活入るか決めてる?テレビって何見る?ドラマ派?お笑い派?私はドラマ派〜」
今から思えば、その子はずっと困った顔をしていた気がする。でも、その時の私はそれに気づかず、あんなこと恥ずかしいことを言ってしまった。「友達100人出来るかな〜、知ってる?あの歌って私が作ったんだよ?」
ぎゃああああぁぁあぁーーーー!!!意味分かんない!最悪!穴があったら入りたいってこの時に使う言葉なんだ!穴どこ!穴!!!
でも、その子は優しかった。嫌な顔せずずっと私の話を聞いてくれる。私の意味不明なことも苦笑いだったけど、笑ってくれた。それで、私はその男の子、私の後ろの席に座っている清水君のことを好きになった。人ってこんな簡単に好きになれるんだ。それとも私が単純なだけかな。
清水君と話して安心したのか、友達が沢山出来た。小学校で失ったものを中学校で手に入れることが出来た。でも、あれから清水君と話が出来てない。清水君は休み時間難しい本読んでるか勉強してるし、私が話しかけていいのか分からない。私は清水君と話がしたいのに、聞きたいこといっぱいあるのに。でも、もし話しかけられるのが嫌ったらどうしよう。無視されたらどうしよう。いつも清水君は後ろにいるのに、話かけられなかった。
清水君と話が出来ないまま季節は冬。2月14日バレンタインデー。家でチョコレートをいっぱい作って友達に配った。自分で作ったにしては美味しくできたと思う!たぶん!
一つだけ大きいのを作ってみた。これを清水君に渡したい。でも、清水君は受け取ってくれるだろうか。無視されないだろうか。嫌だったらどうしよう。でも…話したいな
女 ねえ
男 え
女 バレンタインだから
二人 僕(私)には好きな人がいる
〜終わり〜
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