炭酸と閃光
タイトル「炭酸と閃光」
作・うゐ春菜

■あらすじ
祖母の病室で、約1年ぶりに再会した従兄弟。無理のない受験で進学した公立高校の2年生で、ひきこもりの優。スポーツ特待生で進学した私立高校の1年生で、名門強豪野球部のレギュラーを獲得した祐。白にあふれた小さな部屋の中で、彼らは少しずつ、寝たきり状態の祖母に、彼らの言葉で彼らを語る。

■メッセージ
なぜ、彼らの「輝き」は、可視化できないのに、伝わるのか。なぜ、彼女の「希望」は、可聴化できないのに、伝わるのか。

■登場人物
優(ゆう)
祐(たすく)


■本編■


Scene 01    【White Room 1】

舞台は病室を模しており、奥側が窓で、客席側が廊下である。
白いベッド、白いチェスト、白い花が飾られた花瓶。窓枠にかかる白いレースのカーテン、白い木製の椅子がある。
窓から僅かに夕日が差し込んでいる。

優が椅子に腰掛けている。
優は私服姿で、白いヘッドフォンを肩にかけている。誰も知らないメロディを口遊んでいる。

そこに祐が現れる。
祐は制服姿で、白いエナメルバッグを肩からかけている。

祐、ノックをして病室に入る。
優、祐の姿を見て、小さくびくっとする。

優    「祐……」
祐    「うん。久しぶり。優くん」



祐    「ばあちゃん、本当に……」
優    「ああ……」
祐    「ずっと?」
優    「倒れてからずっと」
祐    「そっか……」

祐、ベッドの前に跪き、ベッドの中で祖母の手を握るように。

祐    「必ず、必ず起きてね」

優、妙に気まずくなり、祐から目をそらす。

優    「……お、俺、ちょっと自販機に」
祐    「え?」
優    「喉、渇いたから」

優、病室の外に出て、一旦捌ける。

祐    「優くん……。まともに目も合わせてくれないや……」

祐、祖母から手を離し、立ち上がる。窓に寄り、白い花を眺める。

祐    「綺麗な花だね。ばあちゃんが好きそうな。誰が持ってきてくれたんだろう」
1/16

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム