纐纈


登場人物 
父 三鷹 勤(つとむ)
母 三鷹 幸子(さちこ)
H 馬場 久美(くみ)
A 羆山 美幸(ひやま みゆき)
B 三鷹 かよ
猫 マリ


1 プロローグ
舞台下 住宅街の道
 父歩いてくる 手には祝いの品(花束とか) 立ち止まる SE猫の声 父周りを見渡す 地面近くで目を止める 口角を上げ 拾う仕草 はける(余裕があれば祝いの品は舞台下に残したい)

2 母と編集者
舞台上 リビング
(おければダイニングテーブル さらに余裕あればソファ) 机にはカップ2つと茶菓子 母とHが会話している (どこかに空の餌入れが置いてあると楽しい)

H はい、今出ているものもとても好評で
母 よかったわ 夫も書くことは初めてといっていたのに まさかこんなにご好評いただけるなんて
H 初めて…本当ですか! 驚きました 高校などで文芸部だったとかでも?
母 え えぇっと、夫からそのような話は聞いてなかったと思いますが
H 才能…というわけですか それはすごい そういえば先日、近所の書店に行ったのですが、先生の作品が平置きされているのを見ましたよ
母 まぁ、
H 読者離れの激しい現代にこんなに人気があるなんて わかってますか? ほんっとにすごいことなんですからね
母 もう、おだてるのは私じゃなくて夫にお願いします でもほんっとによかったです
H はい、ご安心ください ブームはまだ続くと思いますよ 実写化なんてしたら印税…すごいですから
母 ? あぁ、それもそうなんですけど 夫は昔から仕事人間で、退職後何もすることがなくなってしまうんじゃないかって ほら仕事熱心な人の方が退職後認知症になりやすいって耳にするでしょう 先日まで内心ひやひやしていました
H そちらでしたか いやー、執筆に熱を入れていただいてよかったです 才能を埋もれさせてしまうところでした 老化しないためにも頭はどんどん使っていただかないとですね  で、どんどん新作を出していただきたい
母 馬場さんったら
H あ、いえ 私も楽しみにしてるんです 奥さんの次に先生のファンですからね
母 心強い協力者がいて夫も助かってます
{B入ってくる}
B あ、こんにちは
H こんにちは 休日の朝早くからお邪魔してしまいすみません
B いえいえ うちのおとーさんもう平日も休日もないようなもんなんで 編集さんこそ休日までお仕事ご苦労サマです
H かよさんはおやすみですか?
B はい 今日はめっずらしく一日完全にフリーなんですよ さっきまでお布団で英気を養っておりました
母 かよ!
H いやいや 私も休日はそんなもんですよ
B ママ これは昨日みゆの部屋で頼まれた書類探してたからなんですって もう帰ってくるって言うのが急すぎなんだよなぁ
母 え、お姉ちゃん帰ってくるの?
B …おいおい、ママにくらい言いなさいよ… 多分もうすぐ着くと思うよ
母 まぁ 夕飯足りるかしら
B ねぇ、おとーさんは?
母 それが いつもの散歩に行ってしまってて
B は? 編集さん呼んでおきながら散歩行っちゃったの? 自由人かよ
H いえ、こちらの都合が合わなかっただけなので ほんと無理を言っておしかけてしまいました すみません
母 そんな とんでもない
B そーそー これはおとーさんが悪いわ
H(時計を見る 母に)では 私はこれを一度編集部に届けに行ってきます この時間ですと昼過ぎ…いや夕方には確認ができるかと思いますので またその時お伺いさせていただきます
母 二回もお呼びするなんて 本当にすみません よろしくお願いします
H こちらこそ せっかくの家族水入らずを邪魔することになってしまいすみません
{H原稿をカバンにしまう Hはける B茶菓子を食べようとする}
母 かよ、お母さん馬場さんを送ってくるから 机お願いね
{嫌な顔のB 母はける B机を見る 溜息 コップを持ちはける}

3 美幸ちゃんとかよちゃん
1/9

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム