ステレオタイプの正解率
ステレオタイプの正解率
登場人物
前田圭吾(男)[前田]:ステレオタイプ法によって捕まってしまった男。
花村洋一(男)[花村]:前田の親友で、弁護士をやっている。
花村春香(女)[助手]:花村洋一の助手であり妻である。
本編
Scene1
ここは、弁護士である花村洋一の事務所。花村は依頼者であり親友の前田圭吾と話しながら、事務所へと入ってきた。
二人は机を挟んで椅子に座り、会話を再開する。
花 村「――だから、これは仕方ないことなんだって」
前 田「だけどさぁ……。さすがにあんまりじゃないか。たいした証拠も無いんだぜ」
花 村「ま、そうだけどな。法律で決まってることなんだ。文句を言ってもしょうがないさ」
前 田「うーん。納得がいかない」
花 村「そりゃお前の気持ちもわかるけどさ」
前 田「本当にわかるか? 冤罪で捕まった事あるか?」
花 村「無いけど」
前 田「なら、分からないだろ。しかしなぁ……」
花 村「何だよ」
前 田「何でこんな法律が作られたのさ。弁護士のお前なら何か知ってるだろ」
花 村「まぁそうだな。でも政治家ではないからな。詳しく知ってるわけじゃない」
ノックの音と同時に、春香がお茶を持って入ってくる。
助 手「洋一さん。お茶持ってきました」
花 村「おお、ありがとう。春香」
助 手「あ、こんにちは、前田さん」
前 田「こんにちは。今日もおきれいですね」
助 手「あら、お上手ね」
花 村「俺の妻を口説いても何も出ないぜ」
前 田「俺の妻を口説いても何も出ないぜ。ひゅー、いいねお前は。きれいな助手さんと、結婚なんかしちゃってさ。今年で何年目だっけ」
花 村「二年目だ……。っと、話を戻すぞ」
助手は仕事に戻り、花村は前田にファイルを渡す。
ファイルを受け取った花村は元の席に戻りファイルを前田に見せる。
前 田「これは?」
花 村「お前が捕まったって聞いて、俺も気になったから色々調べてみたのさ」
前 田「さすが親友」
花村はファイルを開き、それを見ながら話をしだす。
花 村「まず、ステレオタイプってのはな」
前 田「あぁ、それなら知ってるぜ。確か、先入観とか、思い込みとか、そんな意味じゃなかったか」
花 村「おおむね正解だ。ただ、これは個人のものではなく、大衆的なものだ」
前 田「というと?」
花 村「具体的には……そうだな。例えば、医者、と言えば男と女、どっちを思い浮かべる?」
前 田「男かな。女は看護師とかのイメージがある」
花 村「そうだな。これは大体の人に聞いても、おそらく同じ答えが返ってくるだろう」
前 田「うん」
花 村「こういうのはステレオタイプといえる。だが、例えばお前が過去にトラウマがあって、それから血液型がAの人は腹黒いイメージがある、という話は、ステレオタイプといえない。それはお前の個人的な偏見であって、その他大勢の人はそうは思わないだろうからね」
前 田「なるほど」
花 村「A型は几帳面でB型は大雑把、というのはステレオタイプといっていいがね」
前田、何かに気づく。
1/5
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。