ブルー・モラトリアム
タイトル「ブルー・モラトリアム」
作・うゐ春菜
■あらすじ
ボクがたどり着いた場所は、「自殺電車」と噂される都市伝説の電車の車庫。そこにいたのは、他人のIDを食らうトカゲと、トカゲを見守るように一緒にいるアリスの二人。なぜボクはこの車庫に生きたまま到着したのか、なぜトカゲは他人のIDを食えるのか、アリスはいつからここにいるのか……。様々な謎が浮上し、それぞれが「ある仮説」によって噛み合ったとき、三人は何を選択し、何を犠牲にするのか。
■メッセージ
これは「自殺」を考えるものではなく、「自分」とは何かを考える作品であり、「ひとりでは生きていけないことだけが、人にとっての運命である」ということを伝える作品です。
■登場人物
ボク・・・・・(男)意識を失ったまま車庫にたどり着いてしまった青年。ボタン付きシャツにデニムでないズボン。
トカゲ・・・・(不定)車庫で暮らすフードを被った(おそらく)少年。パーカーにデニム地の長ズボン。
アリス・・・・(女)車庫でトカゲと暮らす。少女のような出で立ち。フランス人形のような衣服。
■本編■
Opening Act
【Scene 00:駅】
雑踏の中にボクがいる。
ボクは自発的には行動しないが、誰かの邪魔にならないように避けながら立っている。
ぼーっとしながらサンプリングの広告チラシやティッシュを押し付けられ、舞台奥のベンチに座る。
ゴミ箱を見ると、そこは無分別で空き缶や新聞紙があふれている。
ボクは仕方なく渡されたサンプリングを抱えたまま、行き先もチェックせずに到着した電車に乗る。
座席に座ると、次第に眠りに落ちる。
・・・・・・暗転・・・・・・
Title 【ブルー・モラトリアム】
第一幕
【Scene 01:車庫1】
車庫に電車が自動運転で収容される音。
横になっていたトカゲが体を起こし、のびをする。まるでこれが彼の起床のごとく。
トカゲは何の躊躇いもなく車内へ片足を突っ込む。
アリスも起きて立ち上がるが、車内には入らず見守っている。
トカゲ 「なんかあったら、遠慮しないで呼べよ。」
アリス 「大丈夫だよ、今日はなんだか物静かだし。」
トカゲ 「そうか?」
アリス 「昨日みたいに、強い風が吹いて唸るような音がしたら怖いけど、今日は風もおとなしいの。きっと外も穏やかなのね。」
トカゲ 「オレには違いが判らないけどな。」
アリス 「いってらっしゃい。」
トカゲ 「おう。」
トカゲが車内へ踏み込んでいく。足音がある程度進んで、止まる。
アリス 「今日は何人くらい?」
トカゲ 「ざっと見る限り、5・6人かな。」
アリス 「いつもくらいだね。」
トカゲ 「でも、暦でいうと今日が月曜日なんだろ?」
アリス 「うん、たぶんそう。」
トカゲ 「月曜日って、もっと多い気がしてたんだけどな。」
アリス 「そう……だっけ……?」
トカゲ 「あれか、祝日ってやつ。」
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