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家庭愛事象

My Favorite Thigs

登場人物
黒木　彩
中学三年。学年主席の優等生。帰宅部なので、母親よりも早く家に着く。母親に愛されたいと感じている。
黒木　海斗
中学一年。サッカー部所属。親からの期待を重圧に感じる。
杉本　麗
中学三年。彩の友達。進学校希望だが、成績が足りず退部を勧められる。
黒木　望
彩と海斗の母。一応、海斗も彩も平等に愛しているつもり。

ＳＣＥＮＥ　１

『my favorite things』が流れている。
舞台中央、二人が正面を向いて立っている。
ストップモーションが解けると、漫才のように話し出す。
次第に向き合っていき、望と海斗が来るころには通常の会話シーンになる。

麗　　　あ、ねえ聞いて。
彩　　　何？
麗　　　昨日めっちゃあれだった。
彩　　　あれ？
麗　　　あーほら何だっけあの、あれ。
彩　　　あれって何？
麗　　　あれはあれだよ。あのフワフワのやつ。
彩　　　フワフワ？
麗　　　昨日あったんだよ珍しく。すごいおっきいの。
彩　　　おっきいの？
麗　　　そしたらめっちゃ怒られて。
彩　　　怒られたんだ。
麗　　　もーめっちゃ笑った。
彩　　　どっち？
麗　　　めっちゃいい匂いだったんだよねー。
彩　　　待って。
麗　　　何？
彩　　　何もわからない。
麗　　　えー？
彩　　　フワフワでいい匂いのおっきい何かがあって、それをどうかしたら怒られて、笑っ
　　　　たの？
麗　　　何それ。
彩　　　いや、あなたの話！あなたが、麗がしてた話だから。
麗　　　あー。
彩　　　あーじゃなくて。
麗　　　バームクーヘン！
彩　　　おー！
麗　　　うちにバームクーヘンがあったんだよ、昨日。
彩　　　はじめて情報らしい情報きた。
麗　　　お姉ちゃんが買ってきてくれてて。
彩　　　うんうん。
麗　　　それで、昨日グチ大会しながら三人で食べようって言ってて。
彩　　　お母さんとね。
麗　　　でも学校帰ったらめっちゃおなか空いてて。
彩　　　あー。
麗　　　 (大きいホールのバウムクーヘンを持つマイム)ちょっとだけ、ちょっとだけ食べようと思ったの。
彩　　　定番だね。
麗　　　でも食べ始めたら、フワフワでいい匂いで、めっちゃおいしくて。
彩　　　大体予想つくね。おっきいホール半分以上食べちゃって、みたいな。
麗　　　全部食べちゃった。

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