一人芝居『タダイマ』
一人芝居『タダイマ』

【登場人物】男1名(1人2役)

【上演時間】10〜15分

【あらすじ】
ひっくり返せば悲劇も喜劇?
裏返せば善も悪?
一つの側面からじゃ分からなくても、試しに反転してみたら……?

前後編にわかれた、とある二人の会話劇。
前編(SIDE:A)は一人目の視点から。
後編(SIDE:B)は二人目の視点から。
重ね合わせることで、違う真実が見えてきます。

【本編】

(椅子が2つ置かれている。看板か箱に「SIDE:A」と書かれている)

■SIDE:A■

(男が一人、帰ってくる)

ただいまー。いやー、つかれた、つかれたっと。
ごめんねー。すっかり遅くなっちゃって。
大変だったよ。帰り、道に迷っちゃってさー。
どっかで道聞こうとしたけど、ほら、このへん交番もコンビニも何もないじゃん。
いやー、まいった、まいった……ん? 連絡? くれてたの?
ええー? そんなの来てたかなー?(ポケットから何か出して見る)
あーごめんごめん。マナーモードになってて気づかなかったわ。
なんだよ。繋がらないなら、なんか留守電に入れといてくれたらよかったのに。
ごめんごめん、次から気を付けるから。

あーそうだ、ごめんついでなんだけどさ……
もう一個謝らなきゃいけないことがあるんだけど……
実は、さっき……あー、これ言いづらいな!
ほんと? 絶対怒らない?
いや……実はさっき、ちょっと転んじゃってさ。
ほら。服、ひじのとこ、ちょっと穴空いちゃった。
うわっ、ごめん! そんなに怒るなよー。
そうなんだよ。穴空いてて恥ずかしいじゃん。
だから、こうやって左手で穴隠しながら帰ってきたんだ。
うん、大丈夫だったよ。え? 体?
うん、体は大丈夫だよ? ちょっと肘すりむいただけ。
なんだよ。服より俺の体のことを心配してくれるなんて、お前は優しいな。
まー、ほんとごめんね。
服はちゃんと新しいやつ、俺のこづかいで買うから。

はー、やれやれ……
すっきりしたら、ちょっと喉かわいたな。麦茶か、なんかない?
ええー? 水しかないのー?
じゃーいいや。水で。(飲む)
ふー。あー、やっと落ち着いた。

え? なに、どっかに電話すんの? どこ?
あー、そっか……んー……
いや、俺はいいや。なんか、こう、適当に、俺は元気ですって言っておいてよ。
えー、ダメー? うーん……いや、別に嫌いじゃないよ?
たださー、向こう、やたら俺のこと心配してくるじゃん。
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