クソババアの汚部屋
聖霊高校演劇部作
「クソババアの汚部屋」
登場人物
幸子 年齢のわからない容貌。黒い服を着て髪の毛をたらし、部屋の隅にいる。和美が幼い頃夫と離婚し、舞台となる部屋に住んでいた。和美が18歳で家を出てからは一人暮らしで、75歳ほどで孤独死した。残留思念のようなもの。
和美1 幸子の娘。40歳ほど。
和美2 和美の高校生時代。黒っぽい私服。回想シーンで登場する。
和美3 和美の中学生時代。黒っぽい制服。回想シーンで登場する。
和美4 和美の小学生時代。黒っぽい私服。回想シーンで登場する。
※和美2と3はキャスト数の都合により兼役可能。
結衣 和美の娘。高2。片づけのため嫌々連れて来られる。
加藤 幸子のご近所さん。和美とも面識がある。
野村 舞台となる部屋があるアパートの管理会社社員。気の弱い若い女性。
橋本 特殊清掃業者。男性。
舞台配置
舞台上手側3分の1ほどがアパートの廊下。部屋に入るドアがある。
舞台下手側3分の2ほどが居間。廊下で玄関とつながる。いわゆるゴミ屋敷の状態で部屋の中はゴミや日用品、衣類が散乱している。下手側壁際に電話台があり、下の段には鞄が置いてある。中央に押し入れ、下手側に窓があってカーテンが閉められている。下手側壁際に鍵のかかるタンスが置かれている。部屋の中央にはテーブルがある。
あらすじ
20年以上疎遠だった母親幸子が孤独死したことを不動産屋から電話で知らされた和美は、娘結衣を連れて嫌々部屋の片づけに向かう。ところが部屋は完全なゴミ屋敷。散乱するゴミを片付けると、その奥から母との思い出が掘り出される。
年間孤独死3万人、孤立状態1千万人、自殺2万人。今この時もどこかで誰かが床のシミになって人生を終えている。そんな国の片隅で展開される、不器用な一家の許しの物語。
OP 電話
無音で緞帳が上がる。舞台手前下手側単サスの中に野村。電話をかける仕草。
電話の音が鳴り、上手側単サスがついて、和美1が電話をとる。
和美1 もしもし?
野村 あ、はじめまして。私、安井不動産の野村と申します。
和美1 はあ?
野村 あの〜、田中幸子さんのお知り合いの方でしょうか?
和美1 ええまあ、そうですが。
野村 失礼ですが、どのようなご関係でいらっしゃいますか?
和美1 田中幸子は私の母親です。一応。
野村 あ、やっぱりそうでしたか。突然電話してしまい申し訳ありませんでした。実はお母様のことでお話がありまして。
和美1 母とはもう20年以上前に縁を切ってますので。申し訳ありませんけど他をあたってください。
和美電話を切ろうとする。
野村 え?あ、ちょっと田中さん!もしもし!?もしもし!?
和美1 まだ何か?
野村 いや、実は連絡取れるご家族がこちらだけだったんです。
和美1 私も、何もできませんよ。何があったか知りませんけど、今更泣きついてくるなって言ってやってください。じゃあ。
和美電話を切ろうとする。
野村 あ、ちょっと、もしもし!もしもし!あのですね、お亡くなりになったんです。
和美1 え?
野村 ですから、お母様、田中幸子さんがお亡くなりになったんです。
和美1 (少し間を置いて)いつですか?
野村 アパートの部屋で亡くなっているところを先週近所の方が発見されまして。ご遺体の方はもう警察が持って行って、市の方で火葬まではしてあるそうなんですが、ご家族の方の連絡先がわからなかったものですから。今日部屋の確認に入った大家さんがこの番号の書かれたメモを見つけられまして。もしかするとご家族 の番号かなということで、電話させていただきました。
和美1 そうですか。わざわざどうも。じゃ、失礼します。
和美電話を切ろうとする。
野村 え!?ちょっと!まだあるんです!
和美1 まだ何か?
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