中編『シラノ・ド・ベルジュラック』
『シラノ・ド・ベルジュラック』
エドモン・ロスタン作(1897)
登場
■語り部
■シラノ・ド・ベルジュラック(詩人で剣豪。大きな鼻の持ち主。ガスコン青年隊所属)
■クリスチャン・ド・ヌーヴィレット(ガスコン青年隊に入隊したばかりの青年兵士)
■ロクサーヌ(シラノの従妹)
■ル・ブレ(シラノの親友。ガスコン青年隊所属)
■リニエール(シラノの友人。酔っ払い詩人)
■ラグノオ(パン屋)
■カルボン・ド・カステル・ジャルウ(ガスコン青年隊の隊長)
■腰元(ロクサーヌの召使)
etc・・・
******************
■第1場 (舞台は1640年、仏蘭西)
下手にロクサーヌが現れる。
上手にクリスチャンが現れる。
遠く、見つめ合う二人。
中央にシラノが現れる。
ロクサーヌとクリスチャンは消える。
語り部「シラノ・ド・ベルジュラック」
(シラノが前に出てくる)
語り部「シラノは詩人で、剣豪で、哲学者で理学者で、音楽家で、打てばEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ひび),響)く毒舌の名人。誰もが一目置く人物。しかし、その顔は、偉大な画家でもEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(えが),描)けない」
シラノ「なんだなんだ貴様ら! 俺の鼻をじろじろとEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(なが),眺)めやがって。俺の鼻に不思議でもあるのか? 貴様らはこの鼻がちょっとばかりデカすぎると思ってるんだな? 俺のEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(つら),面)の真ん中を、EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ものみ),物見)して面白がる野郎が貴族だったら、このEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(かなもの),金物)(剣)でやっつけちまうのが俺の癖だ!」
?(男が現れて)「おいおい、困るよ、デカ鼻君」
(ザク!)
語り部「今日も、役者が下手だからと言ってお芝居をぶち壊し」
シラノ「引っ込みやがれ! ガブガブと甘ったるい声でしゃべりやがって。台詞をEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(けが),穢)すわ!(後ろで『危険です。真似しないで下さい!』の文)ご来場の姫君たちよ、願わくば光と輝き花と笑い、その笑顔でEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(きし),騎士)の最後をEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(なぐさ),慰)めて下さい。しかしどうか、私がEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(しぶん),詩文)・文章を裁くことはお許し願いたい」
子爵「待てーい! 貴様、貴様は・・・しかし鼻がでかいなぁ」
シラノ「でかいか」
子爵「(笑いながら)やたらにでかい」
シラノ「この鼻を表すのに、それだけか」
子爵「む・・・。(思案)待て待て」
シラノ「ええぃ、ダメだ、青二才! 俺なら言えるぞ。それも調子を変えてだ。
EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(じょじ),叙事)で行くなら『そは岩なり。そは山なり。そはEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(みさき),岬)なり。はたして岬なりや? あらず、そは大EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(はんとう),半島)なり!』
物知り顔なら『EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ゆいいつ),唯一)EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(むに),無二)の動物、アリストファネスのいわゆるEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(セイウチ),海馬)と象とEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(らくだ),駱駝)の混血獣だけが、EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ひたい),額)の下のこの骨の上に、このようなEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(にくかい),肉塊)を持っている!』
EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(じょじょう),叙情)で行くなら『これはこれ、海の神が吹き鳴らすEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ほら),法螺)貝。さてはあなた様はトリトンでございますか?』
田舎っぺいなら『へぇっ! こりゃ鼻けえ? そんではEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(あ),有)んめぇ! ちっけえEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(かぼちゃ),南瓜)だ、でっけえEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(かぶら),蕪)だ!』
号令で行きゃぁ『EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ぜんめん),前面)に現れたEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(きへい),騎兵)に向け、EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(はなう),鼻打)ちのかまえ!』
21世紀風で言うなら『その鼻はロフトで買ったのか? それだけ立派な鼻はEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ひゃっきん),百均)じゃ売ってないだろ? いくらだった?』
ざっとこのくらいの事は、多少のEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(さいかく),才覚)があれば言ってのけられようが、いや〜凡人は才覚なんてEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(みじん),微塵)も持ち合わせがない。文字だってたった三文字しか知らない。まの字とぬの字とけの字だ!」
子爵「やるか! フン、詩人EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ふぜい),風情)が(剣を抜く)」
シラノ「そんじょそこらの詩人じゃないぜ。決闘と一緒に歌を一つ作ってみせようってんだからな」
子爵「なんだと!」
(構える両者)
シラノ「(EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ちょっと),一寸)目を閉じて)うん、そうだな、よし」
弱虫いじめは EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ほんい),本意)じゃないが どこを刺そうか 七面鳥
どてっぱらめがけて 狂わぬ腕前 歌の終わりで ぐっさり刺すぞ
ひと飛び逃げたか 腰抜け貴族 がたがた震えて 血のEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(け),気)も失せたぞ
貴様のEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(けんさき),剣先) EQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(はっし),発止)と受け止め 神にごEQ \* jc2 \* "Font:MS 明朝" \* hps10 \o\ad(\s\up 9(ようしゃ),容赦) えい! そら、どうだ!
歌の終わりで ぐっさり刺したぞ
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