星と、今
『星と、今』

登場人物
太郎(タロウ)…A。男
大上(オオガミ)…B。男
咲(サク)…C。女
筒井(ツツイ)…D。男
少女…E。モモ。女

声&子はそれぞれアルファベットに従ってください。
声&子とそれぞれのキャラクターは別々の人が演じることもできます。

第0.5幕
『昔々あるところに』

太郎 「昔々あるところに」

   明転。太郎、板付き。舞台上は無個性な箱が点々としている感じ。全部黒でもいいし、カラフルでも素敵。座ったり上に立ったりできる強度だとなお良い。それっぽいキーアイテムが乗ってたりしてもいいかも。

   太郎、舞台上をうろうろと動き回る。
   子どもたち、色んなはけ口から無秩序に駆け込んで来て、思い思いの場所に座る。

太郎 「昔々あるところに」
子C 「知ってるよ。」
子B 「おじいさんとおばあさんがいてね、」
子C 「おじいさんは山へシバ刈りに、」
子B 「おばあさんは川へ洗濯に行ったんだ。」
子D 「芝なんか刈ってどうするんだろう。」
子C 「シバ刈りのシバは芝生のシバじゃなくって、柴犬のシバなんだって。」
子B 「柴ってのは薪のことなんだって。」
子D 「じゃあおじいさんは薪を取りに行ったんだね。」
子B 「昔はガスや電気がなかったから、全部薪を燃やしてやってたんだって。」
子C 「料理も、」
子B 「お風呂沸かすのも、」
子C 「全部薪でやってたんだって。」
子D 「じゃあ、スマホはどうやって充電してたのかな。」
子C 「昔はスマホなんかないよ。」
子D 「そっか。」
太郎 「(食い気味に)昔々あるところに」

太郎 「昔々あるところに」
子B 「おじいさんと、」
子C 「おばあさんがいました」
子B 「おじいさんは」
太郎 「山へ死場狩りに」
子D 「ねえねえ、シバってなに?」
子C 「シバ刈りのシバは、『死に場所』のシバなんだって。」
子D 「死場なんか狩ってどうするんだろう。」
子B 「死んだ人は、高く売れるアクセサリーを身に着けてたりするんだよ。」
子C 「それにね、心臓とか肺とか」
子B 「目とか」
子C 「高く売れるんだって。」
太郎 「(食い気味に)昔々あるところに」

   太郎、足でドンと音を鳴らす。
   子どもたち、操り人形の糸が切れたようにうなだれたり倒れこんだりする。

太郎 「昔々あるところにって言うと、なぜか『おじいさんとおばあさんが』って続けたく
なっちゃうもんですよね。決めつけるのは感心しませんね。」

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