紫陽花の咲く時季に
『紫陽花の咲く時季に』

キャスト
  *女
  *男
  *友


雨SE
女、板付き
男、本の入った袋を抱え走って入場


男「・・・よかった。濡れてない。本屋から出たら急に降り出すんだもんな。

  梅雨入りしたって聞いてたのに油断しちゃった・・・」

女「あ」

男「え・・・?」

女「・・・その本、好きなんですか?」

男「この作者の・・・?」

女「突然ごめんなさい・・・その作者の本、わたしすごく好きで、つい」

男「あ、いや・・・僕もこの作者、すごく好きだよ。

実は今日の新刊も、本当は大学の講義サボって買いに行きたかったくらいで。

・・・この作者の話なら、僕はスフィアブルーの夏休みが好きかな」

女「あ、あれ!いいですよね、作者の十八番の心理描写が山のようにあって」

男「そうそう、これでもかってくらい盛りだくさんで」

女「十八番の心理描写なら、泡沫の人魚姫とか。わたしあれ、一番好きなんです」

男「あーあれいいよね!最後のヒロインのセリフに泣きそうになったなあ」

女「ヒロインの心情をすごく大事に描いてくれるんですよね、この作者」

男「ね、ちょっと丁寧過ぎる、なんて言われることもあるけど・・・

  僕はむしろそこが好きかな。感情移入して読めるっていうか」

女「私もそう思います!むしろあの丁寧さがあるからこその怒涛のラストシーンですよ」

男「丁寧に丁寧に書きこんでからの、ラストの勢い!わかる・・・すごくわかるそれ。

  あんまりこの作者好きな人、周りにいなくて、

今まで共感してくれる人いなかったからうれしいな・・・あ、雨やんだみたい」


女、男が見ていない間にはける


男「ねえ、もしよかったら、この新刊の感想・・・あれ」
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