泥梨の花
泥梨の花
            作/川西明峰高校演劇部
          
あらすじ
 舞台は廃墟を思わせる地下室。
 家出をした少女たちが、ある者に誘拐されたところから始まる。
 
 3人が出会ったのは泥梨(ないり…地獄、奈落)の中。

 「アタシはね、かつて自分で自分を殺したのよ。」と語るのは誘拐犯・百合。
 
 暗い過去を越えようとする者たち。
 
 人質にされた女子高生たちは、自分を殺そうとする誘拐犯・百合に何を思うのか。
 ストックホルム症候群を描こうとした本作品。



出演者 総数 3(男 0 女 2 不定 1)
上演時間 40分

初演 2018年3月


【キャスト】

福永 桜(女)       ・・・
平木 柊(女)        ・・・
百合(男女可だが男が望ましいか。オリジナル版では男子が演じた)・・・
 

1.監禁現場

 水滴が滴り落ちる音。電気の消えた空間(ブルー)。あちこちに散乱した段ボール箱や廃材と思われるものなど。桜と柊はお互いに離れた場所でイスに縄でくくりつけられており、眠らされているようである。黒いフードをかぶった女・百合が扉を開けて入り、カギを閉める。ランタンを灯して現れ、ゆっくりと桜のほうへ近づいてしゃがみ、ランタンを桜の前で揺らす。

桜   !(驚いてのけぞる)
百合  だめよ、そっとしなくちゃ。
桜   やめて!
百合  おだまり。

 百合、かばんからナイフを取り出し、ちらつかせる。絞り出すように声を出す桜。驚きすぎて声が出ないようだ。

桜   わ、私。
百合  たまらなく美しいわ。命の危険を感じる者のみが醸し出すその表情。

 百合は柊のほうへと歩き、先ほどと同様しゃがみこんでランタンを柊の顔の前で揺らす。なかなか柊は目を覚まさない。百合はナイフで柊の喉元をなぞる。柊、目を覚ます。

百合  ふふふ。

 柊、不思議そうに百合を見つめる。立ち上がろうとするが、立ち上がれない。

柊   どういうことですか。
百合  ふん、もっと怖がりなさいよ。

 百合、電気をつける。薄暗い部屋である。

百合  おもしろくないわ(ランタンを置き、フードを取る)。
柊   すいません。
百合  こうなったら、もうおしまいね(桜のほうへと歩いていく)
桜   やめて…!
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