ひまわりの詩
ひまわりの詩
登場人物
青山夏子 高校二年生。不登校女子。
平澤太陽 同、転校生男子。
瑞橋葵 同、ド天然女子。
南田美空 同、真面目系女子。
浜崎海斗 同、悪ぶってる男子。
元浦大地 同、舎弟っぽい男子。
一場
屋上。青山夏子が静かに入ってくる。右手に彼女なりの遺書を握りしめている。誰もいないことを確認し、屋上の縁の方へ。下をのぞき込む。
夏子 ここから飛び降りたら、楽に死ねるだろうか……。
夏子は感情の見えない笑みをこぼす。それから遺書を開いてそこに目を落とす。
夏子 結局、言葉は何も出てこなかった。だから一言「さよなら」と書いて、明日の日付と名前を添えた。
腕時計で時刻を確認する。
夏子 十一時五十八分――八月十五日まで、あと二分。
遺書を折りたたみ、飛び降りる体勢に。(柵を用意してそこへ手をかけるとか、靴を脱ぐとか、できる範囲で視覚的に)最後に再び時計を覗き、いよいよというタイミングで扉の開く音。
夏子は身をすくませ、ゆっくりと振り返る。満面の笑みを浮かべた平澤太陽がいた。
太陽 夏子ちゃん!
夏子 ……え?
太陽は茫然としている夏子にお構いなしで彼女に駆け寄り、抱きしめる。
太陽 お誕生日おめでとう。
夏子 ……。
太陽 久しぶりだね。ずっと会いたかったんだ。
夏子 誰?
太陽 太陽、平澤太陽。覚えてない?
夏子 ……あ。
太陽 思い出した?
夏子は太陽から離れてもう一度飛び降りようとするが、太陽がしっかり捕まえている。
太陽 何してるの、危ないよ!
夏子 あなたには関係ない。
太陽 関係あるよ。僕は夏子ちゃんと約束したんだ。誕生日を祝ってあげるって。
夏子 何年前の話よ?
太陽 えっと……十年前、かな。
夏子が抵抗を止め、改めて太陽の方を見る。
太陽 本当にごめんなさい。でも、覚えててくれたんだね。
夏子 生憎忘れられるほど他に思い出がないの。
太陽 ありがとう。
夏子 は?
太陽 覚えていてくれて、ありがとう。
夏子 ……。
太陽 改めまして夏子ちゃん、十七歳の誕生日おめでとう。
夏子 それ、やめてくれる?
太陽 何で?
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