死んでみてから言ってみろ!
死んでみてから言ってみろ!
少女 高校生
女 社会人
どこかのビルの屋上。
明らかにサイズの合っていない制服を着た少女が、遺書を持ってやってくる。
踵の潰れた靴を脱ぎ、傍らに遺書を置いて、ビルの下を覗き込む。
しばらくためらう様子を見せた後、意を決して飛び込もうとする。
女が飛び込んでくる。
女 早まらないでー!
少女 わああっ!?(落ちそうになり、慌てて体勢を整える)
女 死んだって良いことないですよー!
少女 だ、誰あんた!関係ないでしょ!ほっといてよ!
女 出たー!王道の謳い文句―!
少女 別に謳い文句じゃないんだけど!
女 白昼堂々、こんな町中のビルで飛び降りようとするなんて、
誰かに止めてもらいたいって言ってるようなもんですよ!
少女 そ、そんなことない!
女 とにかく危ないから、ほら、こっちに来てください。
少女 ……嫌。私は死ぬって決めたの。死んで楽になりたいの!
女 死んで楽になれるなんて、誰が言ったんですか?
楽になれる保証、どこにもないじゃないですか!
少女 う。
女 死んだらどうなるかわからないのに、死んだ方が楽なんて言わないで下さい!
あなたはまだ若いんだし、色んな可能性を持ってるんですよ。
それを全て捨ててまで、死んだ方が楽なんて……死んでみてから言って下さい!
少女 どっちだよ!死んでほしいの!?
女 そ、そんなこと言ってないじゃないですか。
ただ、死んだこともないのに、死んだ方が楽なんて言うのおかしいなって。
まだまだこれから楽しいことがいっぱい待ってますよ。勉強に精を出すもよし、
恋愛に一生懸命になるも良し。夢を見つけて、夢を叶えて、そうすれば、
生きてて良かったー!って思うようになりますから!生きてて良かったって、
少女 死んでみてから言ってみろー!
女 ひえっ。
少女 生きてて良かった!?それこそ死んでみてから言ってみてよ!
どうする?死んだ後に楽園が待ってたら。食べるものも寝るところも心配なし、
勉強なんてしなくても何にでもなれるし、好きな人とも思った通りに恋愛できる。
そんな世界が待ってたらどうすんの!
女 そ、そんな都合良いことあるわけないじゃないですか〜。
少女 は!?なんでわかんの!?あんた死んだことあんの!?
女 ないですけどぉ……。
少女 それで「生きてて良かった」って何!?死んだこともないのに、
生きててよかったなんておかしくない!?ねえ!どうなの!
女 つ、強い……!
少女 じゃあ、そういうことだから。
女 待ってー!
少女 何!まだなんかあんの!
女 た、確かに死んだことはないけど!でも、死んだ後の世界なんて、
本当に誰にもわからないじゃないですか!そんな未知の可能性に賭けるより、
生きて幸せになる為に努力した方が確実じゃありませんか?
少女 そんなの、努力できる環境にいる人だけでしょ。
女 努力できない環境なんてないですよ!
少女 あーあ!大人のくせに想像力もないんだね。
女 あなたは、何が辛いんですか?
少女 ……(黙って遺書を指さす)
女 よ、読めってことですか?
少女 (頷く)
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