【No title】
【登場人物】
・先輩
・後輩
―― 幕 ――
暗転。
声のみ
後輩「おお、これが例の」
先輩「約束通り作ってきてやったよ〜」
後輩「では早速引きますね」
先輩「おうおう、引いてやってくれ」
後輩「えーっと……これは……」
先輩「なるほど〜これが出たか〜」
後輩「……」(ガサゴソという音があっても可)
先輩「え?ダメ?」
後輩「ああ、いえいえ、全然そんなことはありませんよ。なかなか面白いことになりそうですね」
先輩「え、なにその含み笑い、怖い」
後輩「気のせいですよ。ほらほら、そんなこと言ってないで早く始めましょう」
先輩「何かごまかしてない?」
後輩「じゃあ打ち合わせ通り適当に進めるので、先輩は適当に合わせて下さいね」
先輩「ごまかしてるよね」
後輩「はい、じゃあ先輩は真ん中に立ってください。よーいスタート!」
先輩「えっ!ちょっ、待って!!」
なにかしら音楽。明転。
後輩、舞台端にて
後輩「19世紀も後半に差し掛かり、冬を迎えた西洋のとある国のとある街では、経済の発展と都市化に伴い、レンガや石畳で設えられた美しい建物や道路が立ち並び、多くの快活な人の声が行き交っていました。しかしその夜は、華やかな発展も忘れ去ってしまう程の厳しい寒さと、激しく降り積もる雪が街を襲いました。ほとんどの人は家の中で暖炉にあたり、外を出歩く人はきまって厚いコートやマントを羽織り帰路を急いでいました。そんな中、一人、夜の闇に溶け込むまいと、必死にその声を響かせる少女がおりました」
先輩、舞台中央にてコートかマントの様なものを(ボロボロな感じだとなお良し)羽織り、手にかごのようなもの持っている。寒そう。通りかかる人に声をかけているように。
先輩「マッチ、マッチはいかかですか?そこのお兄さん、マッチを買って……あ……。す、すみません。マッチを買ってくれませんか?……。」
後輩「少女は、自分よりもずっとずっと大きい人たちを見上げ、必死に声をかけますが、ほとんどの人は少女を一瞥し、そして何も言わず通り過ぎていってしまうのです」
先輩「うう、困ったなぁ。誰もマッチを買ってくれないよ。こんなに沢山、全部売りきらないと、お父さんにまた怒られちゃう……」
後輩「少女の父は、とても乱暴で金遣いの荒い男でした。自分の代わりに一日中少女を働かせ、そして少女が必死になって稼いだ僅かなお金さえむしり取り、自分のギャンブルや酒のために使うような、ゴミと呼ぶには余りにゴミに失礼な極悪非道の人でなし最低最悪うんこ野郎でした」
先輩「ん?」
先輩、後輩に少し違和感を覚えるが、後輩は一切気に留めず続行する。
後輩「それでも、少女はまだ幼く、そんな親とも呼べない男でも唯一の肉親である以上、彼女にとっては逆らうことも離れて暮らすことも出来ません」
先輩「ねえさっきなんかすごいこと言わなかっt」
後輩、指を鳴らす(出来なければ手を叩く)。先輩困惑する。後輩は先輩に構わず机や椅子、その他何か食べ物の様なものを少しと大きな酒瓶を持ってくる。先輩はそれを見て手伝う。先輩に指さしなどで舞台端に行くように指示。(※ここ省略して普通に場転しても可)
後輩は椅子に座って机に脚を挙げ、酒瓶を手にもち反対側の手で何か食べ物を食べる。先輩、指定の位置につくと掌の小銭を眺めながら
先輩「ふふ、良かった。今日も少ないけど、何とか温かいスープくらいは作れそう。今晩はとても冷え込むそうだから、何も食べれなかったら、凍えて死んじゃうところだったわ」
先輩、家の中(後輩が居る方)に入るモーション。
後輩「おう、遅かったじゃねぇか」
先輩「お、お父さん。帰ってたの」
後輩「ああ?何だ?俺が自分の家に帰っちゃあいけねえとでも言うつもりか?ああ?」
先輩「そ、そんなことないわ、お父さん。いつもはいないから、ちょっと驚いただけよ」
後輩「そんなことよりてめぇ、俺様に金かくすたぁ、誰のおかげで生活できるかわかってねえみてえだなぁ?」
先輩「ち、ちが……、私隠したりなんかしてない!!」
後輩「じゃあ何で金がねーんだよ!!もしかしててめぇ、仕事サボってんじゃねーだろうな?そんなこしてどうなるかわかってんのか?ああ?」
先輩「サボってなんかないよ!!今日だって、朝からちゃんとお仕事してこうやってお金貰ってきたのよ!!」
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