あやまれないのはキミのせい!(旧題 偶像複合体)
『偶像複合体』
登場人物
久藤美樹 芸名「miki」。女子高生。18歳。アイドルとしてデビューしている。
小山内かのん 女子高生。mikiのおっかけ。16歳。
大石ゆめな 女子高生。かのんの友人。16歳。
笹原久美子 タレント。mikiの事務所の先輩。22歳。
久遠遼一 mikiの兄。警察官。交番勤務。巡査部長。23歳。
石田 謙 mikiのマネージャー。25歳。
谷中(やなか) 茂美 おか持ち。19歳。更正した元不良少女。
開幕
一場 テレビ局の楽屋
遼一が上手側、石田が下手側に立っている。遼一がラフなスタイルなのに対して石田は紺のスーツ。遼一はデパートの紙袋を提げている。
石田 「あんたもわからない人だな。ダメだったらダメだ!」
遼一 「お願いしますよ…。このまま帰ったら怒られるんです」
石田 「あのな、mikiはタレントなんだよ。そうホイホイだれにでも会わせられるわけないじゃないか!」
遼一 「だけど、これをすぐ本人に渡さなきゃならないんです」
石田 「だから、おれが預かるって言ってるだろう!」
遼一 「美樹に直接渡さなきゃならないんです」
石田 「mikiからそんな話は聞いてない! そうか。わかったぞ、おまえいいトシしてプレゼントを渡したいだけだな。それでちょっとでもタレントと話したいとか思ってるだけだろう。いま大変なことが起きてるんだ。おまえなんかに構ってられるか!」
遼一 「なにかあったんですか?」
石田 「…なんで部外者のオマエに言わなきゃならない」
遼一 「そりゃあそうですよねえ」
石田 「その袋の中身はなんだ」
遼一 「知りません」
石田 「そんな怪しいモノをmikiに渡せるか! 帰れ!」
石田、遼一の後ろ襟をつまんで、文字通り上手の舞台外につまみだす。石田、舞台にもどると、後ろから遼一がついてくる。
遼一 「ねえ、お願いしますよ」
石田 「しつこいな、おまえ」
石田、遼一に相撲のように組むと、腹で寄り切る。そのまま上手の舞台の外に出す。石田が舞台にもどると、後ろから遼一がついてくる。
遼一 「お願いします。渡したらすぐに帰りますから」
石田、振り向くと何も言わずに相撲の突っ張りで遼一を上手の舞台の外に出す。
石田が舞台に戻ると、遼一が石田に背負われている。
石田 「やっと帰ったのか? しかし重いな」
石田、遼一を背負ったまま舞台の上をウロチョロする。いきなり気が付く。遼一を振り落す。
石田 「てめえ、なにやってるんだ! だいたいどうやってテレビ局の建物に入ってきた!」
遼一 「守衛さんが知り合いだったので」
石田 「いい加減だな。あとで文句を言ってやる。なにか身分を証明するものを見せろ」
遼一 「参ったな…。免許証は車の中に置いてきたし」
石田 「身分が証明できないんだったら警察に突きだしてやる」
遼一 「それは勘弁してほしいですね…」
石田 「なんか後ろ暗いところでもあるのか?」
遼一 「めんどくさいだけです」
石田 「スネに傷のある奴はみんなそう言うんだ」
遼一、紙切れを取り出す。
遼一 「クリーニングの引換券じゃだめですか?」
石田 「ダメだ!」
遼一、カードを取り出す。
遼一 「歯医者の診察券では…」
石田 「ナメてんのか、てめえ!」
遼一、別のカードを取り出す。
石田 「ポン太カードもダメだ! おまえ、学生なのか? だったら学生証かなんかあるだろう!」
遼一 「いえ、一応勤めてます」
石田 「だったら、社員証を出せ!」
遼一 「社員証は…、ないんですけど」
石田 「フン、警察に突きだしてやる!」
遼一 「カイシャの証明だったら…、(注…警察官はなぜか、警察署のことをカイシャと呼ぶ)これはあまり出したくないんだけどな」
石田 「さっさと出せ!」
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