演劇部に明日はない
「演劇部に明日はない」（作：井口時次郎）
【登場人物】
藤原ますみ・・・新３年生。演劇部部長。
大下真紀・・・・新２年生。演劇部員。
遠藤今日子・・・新３年生。「元」演劇部員。
＊＊＊脚本ここから＊＊＊
暗転の中、音楽（「薔薇は美しく散る」）。
照明が点くと演劇部部長のますみが猛烈に濃い芝居をしている。
ますみ （たっぷりな芝居で）愛・・・それは、甘く・・・。愛・・・それは、強く・・・。愛・・・それは、尊く・・・。愛・・・それは、気高く・・・。愛・・・愛・・・ああ、愛あればこそ、生きる喜び・・・ああ、愛あればこそ、世界は一つ。愛ゆえに人は美しい・・・
真紀 （遠くから）オスカール、オスカール、オスカール・・・
ますみ ああ・・・遠くで声が聞こえる・・・白き薔薇一つ清らかに咲く・・・静かに白く慎ましく、香りたつ・・・
真紀 （遠くから）オスカール、オスカール、オスカール・・・
ますみ 清らかな人の・・・姿にも似て・・・白き、香りの、薔薇一つ・・・ああ、ベルサイユに、薔薇が咲く・・・
真紀 ・・・・。
ますみ （素に戻る）ちょっと！ここでアンドレ駆け寄るでしょ！どうしてこういういいとこ外すかなあ！
真紀 っていうか先輩。
ますみ 何よ。
真紀 これって、新入生歓迎用のお芝居ですよね？
ますみ そうだよ。
真紀 うーん。
ますみ なに？何か問題でも？
真紀 いや問題だらけでしょ。
ますみ えー。
真紀 「ベルサイユのばら」でしたっけ？これ宝塚でしょ？
ますみ 漫画もあるよ。全１０巻。
真紀 そういう問題じゃなくて。こんなんじゃ部員入りませんよ。特に男子拒否してるじゃないですか！
ますみ それでいいのよ。志を同じくする清く正しく美しい女子しか入部は許可しないわ。
真紀 そんなこと言ってる場合じゃないじゃないですかぁ。
ますみ いや、こういうことは妥協しちゃダメ。徹底的にやらないとね。
真紀 その徹底的ってのがアレですか？（部屋の隅に置いてある布を指さす）
ますみ あ、気づいた?
真紀 はい。
ますみ ・・・見た？
真紀 見ました。
ますみ そっかあ。
真紀 「そっかあ」じゃないですよ。何ですかこれ！
真紀、布を開く。
その布には「来たれ！！女の花園 演劇部へ！」と書いてある。
真紀 やめましょうよこれ。濃すぎますって。
ますみ そうかなあ。
真紀 引きます。絶対引きます。保証します。
ますみ そこまで言わなくたっていいじゃない。せっかく作ったんだから。
真紀 いいんですか？このままじゃ演劇部つぶれちゃいますよ？
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