二人のらすと・さまー
上手側と下手側に、広くハの字に開いてベンチ。
上手側のベンチの上にA。仰向けになって寝ている。
下手側のベンチの上にB。片手をたらすように寝ている。
音楽。緞帳が開く。明かりが入る。
A おーっ!
がばっと起きあがる。
A うっわーっ! 寝ちまったーっ! (落ちそうになって)うぉーっとっと危ない危ない。いま何時? うわー時計がない時計がない、どうしようどうしよう、どうしようって言ったってどうしようもないかちくしょー。(途中でテンションダウン)
B (もぞもぞ動く。が、器用にベンチからは落ちない)
A あっぶねぇやつ。
B (もう少しもぞもぞ)
A 起きろよー。
B (動かない)
A 起きろこらぁっ!
B (びくっと動いて落ちそうになって)うぉーっとっと危ない危ない。
A (ひょい、と飛び降りるようにベンチから立って)危ないって高さじゃないよね。
B あれ? なんだ?
A 寝ぼけてない?
B なに? 寝ぼけてる? だれ?
A ほかにだれがいる。
B やっだー、知ちゃん、なに寝ぼけてんのよ。
A あんたよ、潤ちゃん。
B あら。
A そんなとこでよく寝てるわねー。
B 知ちゃんだって。
A おお?
B 寝てたじゃない、そこで。
A 潤ちゃん。
B はぁい?
A あんた、目ぇ開けながら寝てた?
B あたしは魚か。
A いやだって。なんでわかんのよ、寝てたって。
B 見たもん。
A なにを。
B 寝てるとこ。
A ひとの寝顔見たか。
B だめじゃん、起きてなきゃ。
A 自分だって。
B 何時よ、いったい。
A さぁ? 時計もってない。
B あれ、見えないかな。
A なに?
B 校舎の時計。あったじゃん、三階の壁に。
B、ベンチの上に立ち上がっていく。
A 中庭から見えたっけ?
B んー、えっとねー。(背伸びをする。危なっかしい。)
A ちょっとちょっと、気をつけなよ。
B んーと、三時半、くらいかな?
A 午前?
B 当然。夜でしょ? いま。
A まったくもう……潤ちゃん、来るの遅いんだよ。
B いいじゃん。明日仕事休みでしょ? あーもう今日か。
A 晩ご飯とっくに食べ終わってたよ、あの時間。
B あれでも一本早い電車で来たんだけどな。
A それでなに? 朝イチで帰るって?
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