焦熱の砂漠へ
    焦熱の砂漠へ

             ソンブレロ



    緑豊かな都市型公園。
    初夏の午後三時頃。

    ベンチに男が一人。
    手にはペンと小ぶりのノート、思案
    しながら時折ペンを走らせている。
    やがて女が現れ、ベンチのそばで立
    ち止まる。

女 こちらよろしいかしら?
男 え、ええ。

    男、ベンチの端に座りなおす。

女 ごめんなさい、木陰になっているのってここだけなので。
男 ああ、そうですね。
女 ベンチはいっぱいあるのに......。
男 構いませんよ。
 どうぞ。
女 ありがとう。(座る)

    女、バッグの中から出した手帳に目
    を通していたが、やがて男の手元に
    興味が移る。
    男、その視線に気づき、両者目が合
    う。
    女、微笑みながら軽く会釈する。
    
    女、一旦自分の手帳に意識を戻すが、
    再び男の手元を見つめる。
    男、その視線に気づき、再び両者目
    が合う。

女 素敵な字ですね。
男 え。
女 味わいのある文字を書かれるのですね。
男 そうですかね......。
女 言われたことありませんか?
男 ええ、特には。
女 ごめんなさい、覗いたりして。
男 いえ......。

    男、作業を再開する。
    女、その様子を覗っている。

女 お仕事ですよね?
男 はあ、まあ。
女 小説ですか?
男 いいえ、記事と言うか、レポートみたいなものです。
女 いつもこういうところで書かれるのですか?
男 まあいろいろですね。
女 見て頂けますか、これ。

    女、手帳を差し出す。
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