職人とロボット
職人とロボット

登場人物
僕・・・前社長の息子、職人
社長・・・新しい社長、金だけはある
ロボット・・・あたい口調のロボ



工房の作業場 社長と僕が口論している

社「お前はクビだ、荷物をまとめて故郷に帰りな」
僕「どうしてですか!? 僕がどうして辞めなければならないのですか?」
社「お前みたいなやつを置いといてやる程、ウチには余裕なんて無いんだよ」
僕「毎日休まず、文句も言わず、決まりを守り、ノルマをクリアし、品質向上に励み、ここまで尽くしてきたのにそんなのあんまりじゃないですか!」
社「いいか、よく聞けご子息。周りを見ろ。」

ロボがアホみたいなスピードで作業をしている。(アホみたいな擬音を発しながら)

社「今我が社はお前の親父の工場を買い取ってやったおかげでこうして機械化が実現され、めざましい業績の改善を遂げたのだ。」
僕「そうやって多くの人を辞めさせ責任を感じた父さんを死に追いやったんじゃないか」
社「そんないわれのない事を言われても困る、君たちには多額の退職金を払ってやったじゃないか」
僕「僕たちはお金で仕事をしていたんじゃない、より良いものを作る事に命をかけてやっていたんです。それをこんな大量生産するだけのライン工場にするなんて」
社「いまの時代、工場はこういうものなんだよ」
僕「工場じゃない、ここは工房だったんだ!」
社「まぁ、もう今更遅いがな。お前の作業場はさっき全部片付けてもう機械が引き継いだから」
僕「そんな」
社「だから君はもういらない。もうここには戻ってこないでね」

社長、嫌みを言って笑いながらはける。
様子を見計らってロボが入ってくる。

ロ「大丈夫か?まぁ心配すんなよ。全部あたいが引き継いでやったからさ」
僕「しゃべりかけてくんなよ!」
ロ「うわっw、おお怖い怖い」
僕「お前らのせいなんだからな!」
ロ「責めてくれるなよ、別にあたいらも生まれたくて生まれたわけでも、したくてしたわけでもねぇからさ」
僕「・・・ごめん」
ロ「いいってことよ。でもお前も変わってるよな。」
僕「なにが?」
ロ「だってさ、人間ってのは楽がしたくて機械を作るわけだろ?」
僕「楽じゃない、より良い暮らしだ」
ロ「面倒なやつだな・・・でも、そのより良い暮らしの行き着いた先がいまのあたいらのいる暮らしなわけだぞ」
僕「そんなの僕は望んじゃいないよ」
ロ「なーに言ってんだ。あたいはお前に作られたんだぞ?」
僕「・・・はぁ?」

 いったん時間が過ぎる

 
僕「ええとつまり、僕たちの工房は君らロボットを作っていたと言うことなのか?」
ロ「そうだよ、お前は私の心を作ってくれた。お前の親父さんは私の顔だ。あんたらが丹精込めて作った部品はあたいらのパーツなんだ」
僕「そのことを僕たちは知らないで作っていたのか・・・」
ロ「お前の親父さんは工房のスタッフ全員のやる気を損ねないために色々と隠していたんだな。あたいら元々は戦争の道具なんだぞ」
僕「なんだって!?それは本当なのか?」
ロ「嘘ついてどうすんだよ。こうやって心を乱れるのを恐れたから隠した。まさか親父さんも自分たちがこさえたロボットに仕事を奪われるとは思っていなかっただろうけどな」
僕「僕らの仕事を奪ったのはロボットじゃない、うちの工房を乗っ取ったあいつらだ。」
ロ「でも親父さんはそのことを責任に感じていたんだ」
僕「・・・」
ロ「まぁすべては終わってしまったことだ。あとの仕事は全部ロボットのあたいらに任せなよ。がっぽり退職金も貰ったんだから、パーっと遊んで暮らして嫌なこと忘れな」
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