A frog jump into
登場人物
美湖(みこ)
夏生(なつき)
結(ゆい)
SE 水が跳ねる音
明転
用水路のほとりに制服を着た女子中学生が3人いる。
美湖は手に持っていたいくつかの石を用水路に投げ入れている。夏生はその様子を眺めている。結はスマホに夢中。持っていた石を全て投げてしまうと、立ち上がって他の石を探しに行く。
夏生 「美湖、それ楽しい?」
美湖 「うん。」
夏生 「相変わらず意味わかんないね、あんた。」
美湖 「そうかな。」
夏生 「石投げてるだけじゃん。どうせなら水切りでもすれば?意外と才能あるかもよ?」
美湖 「水切り?」
夏生 「そう。なんか、こう、シュっと石を投げて、水の上をぽんぽーんって。」
美湖 「それ、楽しい?」
夏生 「ただ石投げてるだけよりは楽しいよ、たぶん。」
美湖 「そっかあ。」
美湖、それらしい感じで石を投げるが、石は跳ねずに沈んでしまう。
美湖 「だめだ。石、跳ねず。」
夏生 「え?」
美湖 「朱華色って知ってる?」
夏生 「ハネズ?」
美湖 「そう。朱華色。朱色のシュに、難しい方のハナで、朱華。」
夏生 「初めて聞いた。」
美湖 「淡いオレンジみたいな色。ハネズっていうのは、ニワウメっていう植物の別名なんだって。」
夏生 「梅って、梅干しとかの、あの梅?」
美湖 「たぶんね。よく知らないけど。」
夏生 「結、ちょっと調べてみてよ。」
結 「え?」
夏生 「ハネズイロ、だって。」
結 「うん。」
結、スマホの画面を夏生に見せる。
夏生 「ふうん。いい色だね。そういうこと、無駄に詳しいよね、美湖って。」
美湖 「受験には、出ないけどね。」
しばらくの間。
美湖、再び手に持った石をひたすら投げる。
夏生 「何が楽しいの、それ。」
美湖 「ちょっと黙って。」
美湖、石を投げる。
美湖 「ほらね。」
夏生 「は?」
美湖 「風情があるじゃん。」
夏生 「ないでしょ。」
美湖 「古池や蛙飛び込む水の音。」
美湖、石を投げる。
夏生 「カエルじゃないし。」
美湖 「この石、カエルみたいに見えない?」
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