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坂本龍馬を殺さなきゃ！

タイトル『坂本竜馬を殺さなきゃ』

【登場人物】

柚子レモン（２６・女・ゆずれもん）…歴史アイドル
坂本龍馬（３３・男・さかもとりょうま）…攘夷浪士
中岡慎太郎（２９・男・なかおかしんたろう）…攘夷浪士
水崎麻衣（３１・女・みずさきまい）…柚子のマネージャー
佐々木只三郎（２７・男・ささきただざぶろう）…見廻り組組頭（みまわりぐみくみかしら）
目黒（３０・男・めぐろ）…謎の黒服の男

【本文】

○　　　近江屋・２Ｆ

　　　近江屋２階、和式の部屋。床は畳が敷いてあり、壁には掛け軸。
　　　部屋の中央には七輪とその左右に座布団。
　　　上手には障子の扉。その先は舞台上には見えないが階下に降りる階段になっている。
　　　下手は障子の窓と別室へつながる通路。
　　　雨の音が聞こえている。
　　　舞台上には柚子レモン（２６）と水崎麻衣（３１）。
　　　水崎は目を爛々と輝かせて部屋を物色している。首からカメラをぶら下げており時々部屋の中を撮影
　　　する。
　　　レモンは水着姿にベルトをして帯刀という出で立ちだ。腕組みをしてつまらなそうに壁に寄り掛かか
　　　り明らかにイライラしている。
　　　水崎はしばらく物色した後、急にレモンの方に向き直る。
水崎「間違いありません。噂は本当でした！　レモンさん、これは大発見ですよ！　いいですか？」
レモン・水崎「この世に生まれて３１年、歴女になって18年、こんなに興奮した事は……！」
レモン「……」
水崎「マネしないで下さい」
レモン「……」
　　　掛け軸に駆け寄る水崎。
水崎「見てくださいレモン、掛け軸！　ほら、ここ、血のあとがあるじゃないですか」
レモン・水崎「刺客の刀がこう横に……」
水崎「マネしないで下さい」
レモン「……」
水崎「あー歴史が私を包み込んで……」
レモン・水崎「テンションあがります〜！」
　　　レモンを睨む水崎。
水崎「レモン、ホントもういい加減に……」
レモン「（遮って）いい加減にして欲しいのはこっち。もう何回目、そのセリフ？」
水崎「だって……」
レモン「だってじゃないよ。いつまでやってんの」
水崎「レモンは何とも思わないんですか？」
レモン「何が？」
水崎「ここはかの有名な坂本龍馬と中岡慎太郎が暗殺された場所ですよ？」
レモン「知ってるよ。寺田屋でしょ？」
水崎「違います。近江屋！　寺田屋は新選組に襲われた所です。暗殺されたのはここ。近江屋という名前の醤
　油屋の２階です」
レモン「え、醤油屋？　何で醤油？」
水崎「もーだから前にも言ったじゃないですか！　しっかりして下さいよ。坂本龍馬はアナタが一番好きな歴
　史上の人物なんですから！」
レモン「知らないし」
水崎「そんなんだからちっとも売れないんです。歴ドルとしての自覚が足りません！」
レモン「歴史とか全然興味ないし。事務所の意向だか知らないけど、勝手にキャラづけされても……」
水崎「（たしなめるように）レモン。それ社長の耳に入ったらヤバイですよ」

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