ヘレス・トルーソーの名のもとに
『ヘレス・トルーソーの名のもとに』
高凪なおと
【登場人物】
本橋邦安(26・男・もとはしくにやす)…囚人
猪山明日香(28・女・いのやまあすか)…博士
亀ヶ谷真紀(28・女・かめがやまき)…博士
東鳥修(33・男・ひがしどりおさむ)…博士、どもってる
夕張ハルヱ(26・女・ゆうばりはるえ)…ナース
看守(34・男)
【本文】
○ とある病院・研究室
とある病院の研究施設。
机とイスが置いてあり、ビーカーや顕微鏡などの医療器具が置いてある。
上手と下手にそれぞれドアがある。
下手のドアは鉄製のドアで小窓がある。
上手のドアは研究室(以下、ラボ)への入口である。
また下手側には隣室に続く通路がある。
ラボに通じるドアのすぐ横の壁には1着の防護服と2着の白衣がかかっている。
イスに座って顕微鏡をのぞいている猪山明日香(28)。猪山は白衣姿だ。
ラボのドアを開けて出てくる防護服姿の亀ヶ谷真紀(28)と東鳥修(33)。
防護服はヘルメット付きの本格的なものだ。
亀ヶ谷「何やってんだよ! ラボにも顔出さねぇで。良い身分だな! この防護服、結構熱いんだぞ!」
猪山「……」
亀ヶ谷「おい、コラ。猪山! 無視するんじゃない!」
猪山「……」
防護服から白衣に着替えている東鳥。
東鳥「い、猪山。か、か、亀ヶ谷が」
猪山「何でしょう?」
亀ヶ谷「東鳥の声は聞こえてウチの声は聞こえないって事!? イジメか? イジメなのか!?」
猪山「モゴモゴ言ってて聞き取れないんで。悪しからずです」
亀ヶ谷「聞こえてるだろ!」
猪山「聞こえません」
亀ヶ谷「嘘つけ、このチビ!」
猪山「誰がチビですか!」
亀ヶ谷「聞こえてんじゃん!」
東鳥「か、か、亀。いいから、ぼ、防護服、脱げ」
亀ヶ谷「言われなくても脱ぐし!」
ブツブツ言いながら防護服から白衣に着替える亀ヶ谷。
東鳥「いの。ど、ど、どうだった?」
首を横にふる猪山。
東鳥「そうか……」
亀ヶ谷「ホントは見逃してるんじゃないの?」
猪山「ちょっと待って下さい。聞き捨てなりませんね、今の言葉。私がミスをしてるとでも?」
亀ヶ谷「そうとしか考えられないでしょ。こんだけやって成果が全然出ないなんて。どうせ電気泳動とか蛍光染
色とか、そこら辺の過程でしょうもないミスしてるに決まってるし!」
猪山「そんな初歩的なミスする訳ないでしょ! 結果が出ないのを他人のせいにするなんて発想が貧困です!
そもそも亀ヶ谷さんの取ってくる検体が悪いって可能性の方が高いと思いますけど!」
亀ヶ谷「何だと!?」
猪山に掴みかかる亀ヶ谷。
猪山「だってそうじゃないですか! ないものはないんです! ちゃんとマクロで当たりつけてからこっち持っ
てきて下さいよ!」
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