幻影高校の殺人
幻影高校の殺人
瀬尾七生
登場人物(全員高校三年生)
夏子
春子
冬子
雄一
大作
秋子の母(声のみ)
放課後の教室、ホワイトボード(黒板の代わり)に張り紙、「センター試験まであと20
日」と書かれている。
壁に時計、本棚の上に本が積み重なっている。
冬子が隅で、背を向けるようにして何かを読んでいる。スカートが長く、三つ編み。
正面のイスに茶髪の春子が胸にナイフを突き立てて、仰向けにぐったりしている。胸
元からは血を模した赤い布が垂れている。いかにもギャルっぽい感じ。
そこへ、茶髪で同じようにギャル系の夏子がふてくされたように登場。
夏子「あ〜あ、やんなっちやったよ」
ドンと鞄を置いてイスに座る。春子には気にもとめない。
夏子「まったくカズヤの野郎、ふざけやがって。さっき職員室の前で会ったら、そろそろ髪を直したらどう、だってよ。(教師の真似をして)校則を守れないようじゃ、社会に出ても訳に立たないぞ、高校時代は社会に出るための練習期間だからな、高校で適当にやってる奴は社会に出ても役に立たないんだ……とか、いちいちうるさいんだよな。(と言いながら、手鏡を取り出し、メイクを直す)まだ、大学出たばっかのくせして、社会のこと知ったつもりになってんの。何様なんだよ。……あたしら就職したら、髪染めたりできないんだから、茶髪できるの今しかないの。イケテルJKやりたい気持ちなんて、あのバカにはわかんないんだよ」
一人で喋って、春子のことは気にしない。冬子がパラリと紙をめくる。(以下、冬子
は時おり紙をめくる)
夏子「(化粧をしながら)しかし、うちの高校はろくな教師がいないよな。定年間際のジジイか新米ばっか……。まあ、田舎の分校じゃ、しょうがないか。何しろ高校になっても一クラスだもんな。しかも、仲間が小学校から全然変わらないんだから、笑えるよ(とスマホを見て)やべ、もう5時か。急がないとバイト遅れちゃうよ。テンチョーうるさいらな」
春子「おい」
夏子、無視して化粧に余念がない。
春子「おい、て言ってんだよ」
夏子「なんだよ。今忙しいんだよ」
春子「お前、何してんだよ」
夏子「何って、バイトに行く用意だよ」
春子「おかしいと思わねぇか?」
夏子「何が?」
春子「何がって、この状況だよ。これ見てなんとも思わねぇのかよ」
夏子、春子の様子を見るが、何事もなかったように化粧を続ける。
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