朝を叫んで

朝を叫んで

紫乃(しの)
ゆかり



朝。
狭いアパートの一室。大きめの窓から、昇り始めた柔らかく冷たい太陽の光が差し込んでいる。
紫乃とゆかりが寝ている。
朝日に起こされるように、ゆかりが目を覚ます。
ゆっくり体を起こし、あくびをひとつ。
となりでまだ眠っている紫乃に目を落とす。
そっと紫乃の体をゆする。

ゆかり   紫乃。紫乃
紫乃   ん…
ゆかり   紫乃。起きて
紫乃   うん。…えっと
ゆかり   おはよう
紫乃   ゆかり
ゆかり   おはよう、紫乃。いい夢見れた?
紫乃   わからないけど、そうでもないと思う
ゆかり   そっか。さ、起きて
紫乃   もう少し寝てる
ゆかり   なんで
紫乃   だって、まだ眠いもの
ゆかり   だめ。もう朝だから。ほら、起きるよ

ゆかりに支えられて体を起こす紫乃。

紫乃   今日、少し寒い
ゆかり   朝は冷えるって言ってた。なにかあったかいものいれてこようか

ゆかり、立ち上がる。

ゆかり   ホットミルクでいい?

返事がないため、紫乃を振り返るゆかり。
布団をかぶって、ぼんやりと窓の外の朝日を眺めている紫乃。

ゆかり   どうしたの?
紫乃   私、夜の方が好き
ゆかり   そうなんだ
紫乃   うん
ゆかり   どうして夜が好きなの?
紫乃   眠って、そのまま死ねるような、そんな期待をしちゃうから
ゆかり   死にたいの?
紫乃   死にたいのかな。でも、本当に死にたかったら、こうやって朝を迎えてないわ。いつでも死んでいいと思っているだけ。そんなことを考えていたら、また朝が来るの

ゆかり、ホットミルクの入ったマグカップを二つ持って戻ってくる。
一つを紫乃に渡し、紫乃のかぶっている布団にもぐり込んで隣に座る。

ゆかり   朝は嫌い?
紫乃   朝は虚しい。何も成し遂げていない昨日の自分が、今日も生きようとしていて。生きたい理由もないのに
ゆかり   その気持ち、ちょっとわかるかも。なんにもないのに、結局朝が来ちゃったみたいな
紫乃   一緒ね
ゆかり   そうだね
紫乃   ゆかりも、夜が好き?
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