シェアルーム
シェアルーム

登場人物
 A 男 ダイスケ
   B 女 ノドカ
   C 女 アユ
声 先生 伊藤
    医者 内藤



  秒針が時を刻んでいる
  そしてそれをかき消すようにアラーム音が響く

B「おはよう」

  明転
  ベッドが二つ
  カーテンで仕切られている

B「おはよう、ダイスケ?起きた?」
A「んん・・・」
B「まだ寝てるなあ?起きて、起きて」

  B、騒がしく声をかける
  A、うっとうしそうに目覚める

A「ああ、もう何、おはよう」
B「えへへ、起きた?」
A「起こされた」
B「おはよー」
A「朝からそんな大声出して、また怒られるぞ。アラームもこんなおっきい音で鳴らして」
B「えー大丈夫だよ」
A「大丈夫じゃないってば」
B「(笑う)」
A「こないだだって、昨日かあれ、怒られたじゃんじじいに」
B「あー、あったね、そんな時代も」
A「昨日だって」

A「彼女はノドカ。二年前から俺と同室している少女。まあごらんのとおり、こんな感じで毎朝俺より先に目覚めては俺のことを起こしてくる。もちろん起こしてくれって頼んだわけじゃないし、病院で早起きしなきゃいけない理由ってのももともとそんなにない。だからこの朝起こすって行為は半分くらい迷惑を感じているのも正直なところ。ったく、大声出したりアラーム鳴らしたり、なんでか怒られるのはいつも俺なんだからそろそろわかってくれっての」

B「えへへ、怒られないコツはね、こうやって起きて起きてって言って、そしたらこっちに先生とか来るでしょそのうち。そのこっちに来る気配を感じたらちょっとずつこう、声のボリュームを落としてくのね。ピアノのデクレッシェンドみたいな。でもダイスケはまだ声大きいままだから看護師さんたちにはダイスケが一人で騒いでるように見えるってわけだ。これぞ名付けて、名付けて、まあいいや」

  B、咳払いを一つ

B「彼の名前はダイスケ。二年くらい前かな、そのくらいのときにこの病室にやってきた男の子。まあ私もそんなに友達多いわけじゃないし、みんなだんだんとお見舞いにも来てくれなくなっちゃったから今のとこ私の唯一の話し相手、かな。あ、でも友達いないわけじゃないからね、私だって昔はそれなりに」
A「ほら、ノドカも朝の支度始めろよちゃんと」
B「わかってるって。ダイスケは私の母親か」

A「こうやって俺と彼女の同室生活は始まる。同室といってももちろんカップルの同居生活とか、そういうのとはわけが違う。ただ病院のなかで偶然ベッドが隣だっただけ。偶然。たまたま。そしてカップルのそれと違う一番の要因は、お互いのベッドがカーテンで仕切られていてお互いの姿が見えないことだ。カーテンで仕切られた向こう側、つまり相手の世界を」
B「生活を、私たちは完全に把握しているわけではなかったけれど、彼と私はきっと同じような行為をおこなって生活している、生きているのだろうなって思ってた。朝になったら同じ時間に起きて」
A「起こされて」
B「布団をめくり、着替えを始める」
A「そして、健康のためだか何だか知らないけど、お世辞にもそんなにおいしいなんて言えない、そんな朝ご飯を食べたら」

  学校のチャイムの音

先生「今日の授業始めるよ」
AB「はーい」

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