灰かぶり少女
「灰かぶり少女」
作 菅原 悠人
〇シーン1
照明、少し暗め。
舞台中央で話始める。
ティア この世界って本当に素晴らしいわ。空気も空も風も太陽も水も全部、素晴らしくて愛おしくてたまらない。全部手にすくって一日中眺めていたいのだけれど、私の手はそんなに大きくないの。私の手がもっと大きかったら良かったのに。でも、私が独り占めしてはいけないわよね、皆この世界が大好きなんですもの!そうでしょ?私の名前だってこの世界に与えられたわ。レシュノルティア・バローバって花、青とか白とか赤とか沢山の色があってとても奇麗なの。花言葉は淡い恋心。お父様とお母様はこの花から私の名前をつけてくれた。ティア。私の名前はティア。とっても気に入っている私の名前。だって響きが素敵じゃない。何度も自分の名前を聞きたくなるわ。
ティア、舞台上を動いて。
ティア ねえねえ、お母様。私の名前呼んで!え?なんで?理由なんて無いわ、ただ呼んで欲しいだけ
ティア、動く。
ティア ねえねえ、お父様。私の名前呼んで!ちょっと、どこ行くの!え?友達の家?それって男性?え、違う?ってことは女性?女性なの!?女性なのね!?楽しそうでいいな〜、私も連れて行って!え、ダメ?残念……あ、出かけるんだったらお母様に言った方がいいよ。まだ言ってないのね、じゃあ私が言ってあげるわ。お母様―!
ティア、動く。
ティア お父様が女の人のところに遊びに行くんだって!楽しそう!え?お母様?
ティア、舞台中央。
ティア お母様はお父様を連れてどこかに行ってしまったの。そして、お父様はボロボロになって帰ってきたわ。何故かしら?私には分かりません。私の家族はとても仲が良いの。毎日食卓を一緒に囲んだり、外に遊びに出かけたり、お花を摘みに行ったりしているの。とても幸せな家族だった。でもその生活は終わりを迎えました
ティア、しゃがむ。
ティア お母様、気分はどう?私はとても元気よ!昨日とは違って天気も良いし、太陽さんも元気みたいね。お散歩日和だわ。だからお母様、元気になったらお散歩に出かけましょ?私ね、最近家の掃除とか料理頑張ってるの!でも、まだまだお母様みたいに上手には出来ないの。部屋の隅とか高いところはついつい掃除するのを忘れてしまって、もっと上手に出来ればいいのだけど、料理だってそう。お父様が食べてくれたんだけど火を噴きだしたの。あれって例えとかじゃなくて本当に出るのね、ちょっと面白かったけど……やっぱり私まだまだお母様がいないとダメみたい。お母様、病気治ったら色々教えてくれる?……お母様?お母様!?
ティア、立ち会がる。
ティア お母様は息を引き取りました。辛い、悲しい、苦しい、そんな言葉が頭の中と胸の奥をぐるぐるぐるぐる駆け回って苦しめます。どんなに泣いても、どんなに叫んでもこの言葉が私の中から消えることはありません。それはお父様も同じでした。お母様が亡くなってから、毎晩お酒を飲みながら泣いていました。その姿を見て私も涙が止まらなくなりました。悲しみに耐えられなくなったのか、お父様はすぐに再婚しました。お父様、私は新しい人をお母様と言わないといけないの?お父様はお母様のことを忘れてしまいたいの?だからお父様は新しい人と結婚したの?色々な思いが私の中で生まれて、やがてお父様のことが信じられなくなりました。私は再婚相手の人と暮らすことになりました。私は仕方なくその人のことをお母さんと呼ぶことにしました。お父様も私がそう呼ぶと安心した顔をしました。結婚相手も再婚だったようで、私よりも年上の娘がいました。そして新しい生活が始まりました。初めの頃は普通の生活を送っていました。一緒にご飯も食べたし、お散歩に行ったりしていました。しかし、お父様が仕事のため遠くに行ってしまうと、私の扱いが変わりました。家の仕事は全部私が行うようになりました。服はボロボロなのしか着られず。部屋も隙間風が入る寒い部屋になりました。お風呂にも毎日入れずに髪は灰だらけです。そんな私をお母さんとお姉さんはこう呼ぶようになりました……シンデレラ……と。
暗転。
オープニング曲カットイン。
ティア、ボロボロの服に着替える。
〇シーン2
オープニング曲フェードアウト。
明転・明るめ。
ティア、はたきを持って掃除を行っている。
ティア ここをやって
ティア、動き回っている。
ティア ここをやって
ティア、動き回る。
ティア ここをやると、っさ次々
ティア、箒を持って来る。
ティア ここをやって、ここをやって、ここをやって……
ティア、箒を投げ捨てる。
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