人魚姫


<登場人物>
● 人魚姫:人魚の末の姫 
● 王女:隣国の王女 友好の証として王家に嫁ぐためにやってきた 
● 王子:人魚姫が命を救い、恋した、小国の王子
● 侍女頭(侍女):王女の乳姉妹で王女とともに隣国からやってきた
● 姉姫(声のみ):人魚姫のすぐ上の姉 
● ナレーション:声のみ ※実際に演じるときは省略可能
※ ナレーションと姉姫は同一人物でも可
※ 最小5人で演じることが可能だが、人数に余裕があるときは、家来や侍女などを出してもよい。
※幕間はあまり空かないようにBGMを入れるなどして工夫すること。

<場所設定>
ACT1、4、5   城の中庭
ACT2.3     海の見える離れの一室(王女の部屋)


*  *  *  *  *


ACT 1

 <波の音。かもめの鳴き声>
     
ナレーション
「昔むかし、人間の王子に恋をした人魚の姫がおりました。恋は盲目とはよく言ったもの。恋に目がくらんだ姫君は、美しい声を代償に魔女から秘薬をもらい受け、ついには人間になってしまいます。首尾よく王子とめぐり合い、王宮でそれなりに幸せに暮らす人魚姫。このまま何事もなく幸せな日々が続けば、お話はハッピーエンド・・・。ところがうまくいかないのが人の世の常。悲劇は突然襲い来るもの」


 
【幕開き】

 <お城の中庭。夕暮れ時のホリ。地明かり>

 王子、中庭のベンチにぼんやりとした様子で座っている。
 上手から人魚姫が上着を手に現れる。
 人魚姫、そっと王子に近づいて、肩に手をかける。

   
王子「人魚姫に気づいて)おや、わざわざ探しにきてくれたのかい。(下手側、斜め正面の海を指して)ほら、見てごらん。ここからは海が良く見える。今日はとても波が穏やかだ」


 人魚姫、上着を王子に着せかけようとする。が、王子がやんわりとその手を押さえる


王子「必要ないよ。春の夜風は心地よい。(なおも着せ掛けようとする人魚姫に)わかった、わかった。ありがとう。たしかに風邪を引いてはまずいかな」


 王子、素直に上着を着る。

 人魚姫は城の方(上手)を指差して王子の顔を見る。


王子「みんなが探してるって?ああ、もうすぐ歓迎の宴が始まる時間か。(少しの間。王子、面白くなさそうに)隣国の王女か。噂では、かなりわがままで気まぐれな女とか。父上に今朝呼ばれたよ。くれぐれも粗相のないようにと。私の未来の妻なのだからと。父は私の意見さえ聞かなかった。私には伴侶を選ぶ自由もないんだ」

 
 ため息を吐く王子。なだめるようにそっと触れてくる人魚姫。


王子「すまない。愚痴を聞かせてしまった。政略結婚など別に珍しいことじゃない。隣国は大国だ。婚姻の絆を結ぶことはわが国の利益になる。 王子としての義務だとはわかってるんだ。でも・・・」
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