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蒼

『蒼』

登場人物

青年

絵描き

　♯

　　　　　見渡す限り、青色が広がる世界
　　　　　深い青、淡い青、緑がかった青、様々な青色が広がっている

　　　　　パレットに絵筆を持ち、青色を塗っていく絵描き
　　　　　
　　　　　青年が走ってくる
　　　　　満身創痍、疲労はすでに限界に達しており、息も絶え絶えの様子
　　　　　倒れこみ、苦しそうに乱れた呼吸を繰り返す

　　　　　絵描き、動かしていた絵筆を止め、煩わしそうに青年を見る

絵描き　やかましい奴だな。

　　　　　青年、顔を上げ、絵描きの方を見る
　　　　　周囲の異様な空間に気が付き、混乱する

青年　　こ、こは。
絵描き　何のことはない、息も絶えかけの羽虫よ。水にでも飛び込んだかな。
青年　　……。

　　　　　青年、絵描きをじっと見つめる
　　　　　絵描き、再び絵筆を動かし始める

絵描き　名は？
青年　　俺は……。

　　　　　青年、名乗ろうとするが吐き気を催し、激しく咳き込む

絵描き　もういい、少し口を閉じていろ。汚されてはかなわん。
青年　　……ここは、どこだ。
絵描き　わからんかね？　周りを見てみろ。お前にはどう見える？

　　　　　青年、ゆっくりと周囲を見渡す
　　　　　そこに広がるのは、どこまでも続く青色ばかり

青年　　青い。ひたすら……青色だ。
絵描き　美しかろう。私が彩った。
青色　　確かに……綺麗だな。怖いくらいに。
絵描き　そうだろう。
青年　　俺は、死んだのか。
絵描き　どうだろうな。もしかしたら、お前の見る、最期の景色かもしれんな。
青年　　……。
絵描き　怖いか？
青年　　ああ、怖い。俺はまだ、死にたくない。まだ、死ねない。
絵描き　なぜ？

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