いっこ上の女
いっこ上の女

 場面は狭い会議室。
 一歳年上の先輩井上(女)に説教される中田(男)。
 先輩が言っている事は理解できるものの、
一個上の女に説教されているこの状況になんとなく納得がいかない中田であったが……

  説教を続けている井上。

女「だから、趣味で仕事やってるんじゃないんだから。
  仕事に自分の色を出すのは良いことだけど、勝手にやり方を変えられたら困るの。
  わかる?」
男「……はい」
女「はあ……一年上の私に言われても納得できない気持ちもあるかも知れないけど、
  社会人として先輩の言う事はちゃんと聞いた方がいいよ。
  中田くん一人でやってるならいいよ。でも仕事はさ、組織でやってるんだから」
男「はい」

  井上の携帯電話が鳴る。

女「ちょっとごめん」

  電話に出る井上。
  お客様相手に声が変わる。

女「はい、お世話になっておりますぅ〜〜」
男「!?」
女「お電話ありがとうございますぅ〜〜
栗山商事株式会社の井上でございますぅ〜〜。
  その節は大変お世話になりました〜〜。
  いいえ〜、とんでもございません〜〜。
  はい、はい、本日はどうなさいました?
  はい、はい、いえ、いえ、いいえ〜〜〜〜〜っ
  とんでもございません〜〜〜〜っ」

  井上、中田を顎で促し、

女「中田、ペン貸して」

  中田、頷いてボールペンを渡す。
  井上、手帳にメモをする。

女「はい、はい、はい、かしこまりました〜〜。
  いいえ〜〜とんでもございません〜〜っ。
  はい〜、はい〜、失礼致します〜〜〜」

  井上、向こうが電話を切るのを確認して携帯電話をポケットに入れる。

女「ありがとう」
男「あ、はい」

  井上、中田にペンを渡す。

女「話の続きだけど、君が思ってるように仕事は進まなくて当たり前だから。
  自分の仕事をやるっていうのと、自分の好きなようにやるってのは全然違う事だから。
  仕事はチームワークが大事で──」

  井上の携帯電話が鳴る。

女「ごめん、ちょっと出るね」
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