黄昏に浮かぶ
「黄昏に浮かぶ」
            作 結城 翼


詩織(しおり)・・高校生(目下戦闘的不登校中。人でなしの世界を構築中。) 
碧(あおい)・・・高校生(詩織の幼なじみ。ふんわりした高校生。毎日やってきては帰る)
葉月先生・・・・・・国語の時間講師(頻繁に家庭訪問しては学校に呼び戻そうとするが、モビールを手伝う羽目に。)

☆?T生ハムと長谷川式認知症テスト

    幕が上がると、夕闇が近づく室内。黄昏の色にやや染まっている。こじゃれたア  ールの窓がある。
    センターに割合広い作業台がある。椅子も数脚。室内の隅には、3段×4列程度の組み立てのボックスがあり、本が並べられていたり、雑多な物がバスケットに放り込まれていたりする。大工道具や作業用品、モビール用の材料などがおいてある。
    作業台の上でなにやら細工(モビールづくり)をしている高校生ぐらいの女の子。  生成りのような色の服を着ている。
    サイドに小さいテーブル。その上にカップとソーサー。
    大皿があり、トマト、きゅうり、レタス、クレイジーソルト、サンドイッチ用のパン等がある。
    天井からモビールが結構ぶら下がっている。大、中、小すべて白い羊のようだが、中に一つだけ小さい黒い羊がいる。
    センターやや前寄りにひもが天井から舞台まで下がっている。
    やや、その上手よりに脚立が置かれ、制服姿の女の子がその脚立にのぼって、紐  を途中でもち、はさみで切ろうとしている。

碧  詩織。
詩織 ん?
碧  このぐらい?

    作業に集中していた詩織は、手を休め、ちらと具合を確かめる眼をする。

詩織 んー、もうちょい。
碧  上?
詩織 ちょい下。
碧  ここ?

    小さい間。ちょと首ひねったが。

詩織 うん。余裕欲しい。
碧  わかった。

    碧、チョキンと紐を切る。端を結ぼうとして。

詩織 あ、そのまま。
碧  はい、はい。

    詩織は作業に戻る。碧は脚立を降りる。残りの紐をひろって、作業台にはさみと一緒に置く。んー、と紐の端の高さを見上げ。指を間合いなどを確かめてるが、ま、いっかという感じ。
    よいしょと、脚立を抱えて、上手の方に片付けかかる。
    詩織、作業の手を休めずに。

詩織 どうせすぐに使うのに。
碧  (立ち止まり)んー、でも、なんだか。ほら。
詩織 なんだか?
碧  じゃまというか、なんてーか。まあ、あれだ。
詩織 あれって。
碧  あれよ。まあ、いいじゃない。
詩織 あれね。
碧  あれ。・・・よいしょ。

        と、やや上手に、ナナメ向きにおいた。

詩織 変わり映えしないよ、そこじゃ。
碧  あとで片付ける。ちょっといまは本気モード出てこない。
詩織 おなか減ってんでしょ。サンドイッチでも作れば、ほら。

    と、あごで材料をおいてる大皿の方をさす。
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