脱孤
(だっこ)
「脱孤(だっこ)」  
                        作 樋栄 邦直

舞台は中世ヨーロッパのお城。
舞台下手、お妃様。舞台上手、王様。距離が離れている。
周りを家臣達が取り巻いている。

家臣1  王様は先代の国王とは違い、心広く、民を思い、
強く、気高く、そして慈悲深い王様でありました。しかし、
あの王はどこへ行ってしまわれたのですか?国民は皆、
今でも王様を愛しております。

国王  予が変わったと申すか!!予は何も変わってなどおら
ぬ!! だがしかし…、妃は笑顔を失ってしまった。
一人孤独の世界をさまよっておる。
皆の者、どんな方法を使ってでも妃の笑顔を取り戻すのじゃ。
おい、お前、妃が喜ぶような事を何かやってみよ。

家臣1  いや、私はお妃様が喜ぶような芸は何も持ち合わせてお
りません。
国王  いいからやるのだ。
     (家臣1、芸をする。一同、お妃の顔をのぞき込む。お妃
様、無表情。)
国王  制裁!
    (家臣1、舞台奥に連れ去られる)
国王  ええい、他には誰かいないのか
    (みんな、目をそむける)(召使い3人、おびえる)
国王  そこの女ども、何かやってみよ。
    (召使い1、2、3、芸をする。一同、お妃の顔をのぞき
込む。無表情。)
国王  制裁!
    (三人、舞台奥に連れ去られる。)
    (以下、繰り返し。全員が舞台奥へ行き、舞台中央には王
様とお妃のみが残る)

国王  他には、この妃を笑わせるものはいないのか
    (妃、ゆっくりと王様を見る。王様、どきっとする。自分
を指す。「俺?」)
国王  すまぬ、予は何も出来ぬのじゃ。
    (妃、首を横にふる)
国王  国は荒廃し、今はもう家臣達もおらぬ。予も孤独なのじゃ。
予はそちに、何もしてやることができぬ。今、予に出来るのはこれ
だけじゃ。

    (王様、お妃をゆっくりと抱きしめる。妃、笑顔。それを
見て王様)

国王  そうか、すまぬ、予が間違っていた。家臣達にも謝りたい。
予はそなた達に罪滅ぼしをしたい。
そなた達の欲しい者を何なりと申すがよい。
何が欲しい、金か?名誉か?
    (家臣達首を振る。)

国王  では一体何を望むのじゃ。
    (一同、お妃様の方を見る)
    (王様あわてて、妃をかくす。)

一同 (王様に向かって)ダッコ!!





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