エルミタージュの猫たち
エルミタージュの猫たち 高橋幸良
登場人物
オリガ―黒ずくめの仮面の女
タチアナ
マリア―就活者
アナスタシア
ラプサンス―チョン―マスター
盗賊
盗賊１（女）―おやぶん―客１
盗賊２（女）―あねさん―客２
盗賊３（男）―あにき―客男
盗賊４（女）―客女
浮浪者―（アレクセイの声）
その１ 忍びこむネズミ、守るネコ
夜の画廊喫茶「えるみたーじゅ」
ほとんど明りはついていない…だれもいない…静かである
四つの大きな額が見えている
おそらく絵を飾ってあるのだろうが…目を凝らしても額の中に絵が見えない
客電のはねかえりで額が確認できる程度…額の中は深い闇である
ずっと流れていたかすかな音楽が徐々に大きくなる
それに伴い客電も落ち、闇になる
薄ら青い舞台明りがつくと何もなかった額の中にドレスを着た娘が現れる
四つの額のうち三つまでに娘が絵となっている…ぴくりとも動かない
音楽は明りがともると共に消えている
天井の方で人の気配がする
懐中電灯（あるいはヘッドライト）で天井の梁を照らしながら覆面の人が現れる
天井の梁の上にである
場所を見定めてロープをたらす…つたって降りてくる
あきらかに盗賊である
盗賊が、額を値踏みするように見ている
盗賊、何か腑に落ちない様子である
盗賊が、何もない額を見ていると額の闇の中から手がとびだしてきて
盗賊の頭をつかむ
同時に他の三つの額からドレスの娘たちぬけだしてきて盗賊の背後から盗賊を
額の闇の中へ押し込む
娘たち互いに顔を見合わせ「おほほほほ」と上品に笑い、また自分のいた額へ戻る
何もなかったかのように気どり、額の絵になる
音楽徐々に大きくなり、それに伴い暗転
その２ 面接
画廊喫茶「えるみたーじゅ」の中
舞台奥に二人の面接官（オリガとタチアナ）客席に顔を向けた状態で椅子に座っている
が、客席からは逆光ぎみで、その顔を確認できない。
面接官に向かう形、つまり客席に背を向けた状態で就活者が椅子に座っている。
照明はフェードインして、だんだんと面接官の顔を映し出していく。
タチアナ 特技はなあに？
就活者 特技…と言われましても
タチアナ （追い詰めるように）ないの？ 特技なしなの？
就活者 （あわてて）いいえ、そんなことはありません。
私にも特技はあります。…あったはずです
このあたりで面接官の顔が完全に見える状態
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